BINOS
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論文
喉周辺が赤くなっているアオバトの飛来について
こまたん
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 24 巻 p. 15-25

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抄録

神奈川県大磯町照ヶ崎海岸に飛来するアオバトを観察していると、稀に喉から胸にかけて赤い色の個体(以下喉赤アオバト)が観察されている。今回照ヶ崎への飛来調査記録から、喉赤アオバトの飛来状況及び採食している果実の状況確認を踏まえ、喉赤アオバトの発生理由について検討した。 1 2010年~2016年の照ヶ崎でのアオバト飛来調査において、総観察羽数168610に対して喉赤アオバトは177羽観察され、その出現率は0.10%だった。

2 2010年~2016年における喉赤アオバトの飛来は、主に6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。8月は2012年(34羽)と2014 年(2 羽)を除き飛来はなかった。

3 2010年~2016年の観察時に、性別を識別できた147羽では、オスの比率:73.5% メスの比率: 26.5%だった。

4 2010年~2016年の観察において、喉赤アオバトはすべて成鳥のアオバトで幼鳥の喉赤アオバトは一度も観察はされなかった。

5 2016年の観察回数は他の年の倍以上実施できたので、2016年の記録を用いて詳細な検討を行った。 以下、2016年の記録についての検討結果を示す。

①観察総数42529に対して喉赤アオバトは24羽観察され、その出現率は0.06%だった。

②喉赤アオバトの飛来は、6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。 8月は観察されなかった。

③性別を識別できた20羽では、オスの比率:90%メスの比率:10%だった。

④観察総数42529羽のうちオスの比率:39%、メスの比率:61%だった。観察羽数全体のオスに対する喉赤アオバトのオスの出現率は0.11%、同様にメスの出現率は0.01%。オスがメスに対して11倍の出現率だった。

⑤喉赤アオバトの出現は大きく二つのグループに分かれていた。最初のグループ(第1回目)が6月19日~7月24日まで、2回目の出現が9月12日~9月26日まで。そして幼鳥第1 期が飛来したのが7月18日からだった。幼鳥第1期の観察が集中する7月下旬~9月上旬の間は喉赤アオバト(明らかに喉が赤い個体)は観察されなかった。

6 2010年~2016年の7年間の観察データから、各年度の喉赤アオバトと幼鳥第1 期の飛来は、まず喉赤アオバトが出現し、喉赤アオバト出現終了後に幼鳥第1 期の飛来が増加していくことがわかった。

7 喉赤アオバトの発生理由について複数の候補案を検証し、果汁が赤い色の果実が食べられている時期、および幼鳥が巣立つ時期とに関連が認められた。このことから、照ヶ崎に飛来する喉赤アオバトの正体はアオバト幼鳥の巣立ち~自立するまでの間に親鳥が果実を吐き戻して幼鳥に与える際に潰れた果実の赤い果汁が親鳥の口からこぼれ落ち喉や胸に赤い果汁が付着したものと考えるのが最も妥当な発生理由であった。

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© 2017 日本野鳥の会 神奈川支部
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