バイオインテグレーション学会誌
Online ISSN : 2186-2923
骨補填材β-TCP を用いた上顎洞底挙上術の臨床的検討
橋口 隼人木津 英樹鈴木 啓介朝波 惣一郎
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2013 年 3 巻 1 号 p. 61-66

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抄録
インプラント治療は安全な予知性のある歯科医療の一つとして認知されているが、上顎においては歯槽骨頂から上顎洞底部までの母骨高径が不足している場合は、上顎洞底を挙上し、同部に骨補填材を填塞しインプラントを植立する方法がスタンダードとなっている。骨補填材については、従来より自家骨、他家骨、人工骨など様々なものがあるが、今回われわれは、骨伝導能を有するβ-TCP を用い、その有用性について検討を行ったので、その概要を報告する。対象は、2007 年5 月から2013 年2 月までの5 年9 か月間にβ-TCP を用いて上顎洞底挙上術を実施した61 名105 本(Lateral Approach:35 名71 本、Crestal Approach:26 名34本)において、年齢、性別、埋入部位、CT 画像上での母骨高径、埋入したインプラント体の種類、インプラント体の幅径・長径、挙上量、β-TCP の種類、洞粘膜穿孔の有無、インプラント体の脱落の有無、経過観察期間(5 か月以上)を検討した。全61 名105 本の内訳は、年齢が平均56 歳。性別は、男性21 名・女性40 名であった。部位はFDI 方式の16 番部が33 本と一番多く、実施部位の母骨高径は平均4.7mm であった。埋入したインプラント体の種類はXiVE® が44 本・Camlog PromotePlus® が43 本と多かった。幅径は3.4 ~ 6.0mm で、3.8mmが30 本・4.3mm が31 本と多かった。長径は9 ~ 16mm で、11mm が87 本と一番多かった。挙上量は平均6.6mm、β-TCPは全症例でOsferion® であった。全105 本中、上顎洞粘膜の穿孔は3 症例、インプラント体の脱落は2 本で、経過観察期間は5 か月~ 5 年9 か月間、平均3 年3 か月であった。上顎洞底挙上術において骨伝導能を有する移植材料としてβ-TCP を用いたが、アレルギーなど人体への為害作用も見られず、操作性にも優れ、長期予後が望めたため有用な骨補填材として評価したい。
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© 2013 一般社団法人バイオインテグレーション学会
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