抄録
早期の骨新生が得られるHA 薄膜の獲得を目的として,スパッタリング法によりマグネシウム含有ハイドロキシアパタイト(Mg-HA)薄膜の作製を試み,その化学組成,細胞培養による骨親和性を評価した.成膜にはスパッタリング装置を使用し,ターゲットにHA粉末とMgO 粉末の混合粉末を用い,Mg/(Ca+Mg) の比率を0~ 80% まで変化させた.成膜したMg-HA 薄膜は,120℃で24時間水熱処理を行い,結晶化した.膜中のCa,Mg,P の元素
比率を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)により定量評価し,薄膜の基板との密着性評価には,引張試験を行いた.骨親和性の評価には,ラット頭頂骨由来初代培養系骨芽細胞を用い,石灰化実験を行った. ICP-MS の結果から,ターゲットのMg 比率の増加に伴い,膜中のMg 比率は増加した.膜の基板との密着強度試験結果では,いずれのMg 比率においても,水熱後に密着性が向上していた.また,水熱後のMg-HA 膜では,Mg 比率の増加と伴に,
密着性が減少する傾向が認められた.骨芽細胞のよる石灰化試験では,骨形成面積がMg 比率の増加に従い,減少した.特にMg40 以降で減少が顕著であった.この理由として,HA に置換できず過剰となったMg がMgO として存在していた可能性が考えられた.