2006 年 18 巻 p. 13-22
眼球の反射機能の一つとして前庭動眼反射が知られているが, 注視状態での頭蓋への運動外乱に対する注視点まわりの制御特性としてその機能が調べられている. しかし, 前庭動眼反射とメンタルワークロードとの関係が定量的に調べられたことはないように思われる. 本研究ではまず, Haslwanterらによって提案された数学モデルに基づき, 特定の個人の前庭動眼反射特性を同定し, 同定モデルが実際の眼球の動きによく一致することを確認した. 次に, このモデルを手動制御系におけるトラッキングタスクによって検証することを試みた. トラッキングタスクを実行中に, 音声提示の2桁の暗算をサブタスクとして与え, サブタスクの有無により同定モデルと実際の眼球の動きの誤差を評価し, サブタスクの有無が前庭動眼反射の動特性に影響を与えることを確認した. この結果は, 前庭動眼反射がメンタルワークロードの影響を受けることを示しており, またその影響は同定モデルにより定量的に評価できる可能性を示唆している.