生物物理
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若手の会だより
若手の会だより
~関西支部の活動報告~
荒谷 剛史
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2022 年 62 巻 2 号 p. 146-147

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生物物理若手の会 関西支部

生物物理若手の会関西支部はもともとの京都・大阪・神戸支部が合併して2011年末ごろに組織された1).今日までジャーナルクラブ・セミナーなどを開催したことに加え,若手の会にとって最大のイベントである夏の学校(夏学)を2回主催してきた2),3).筆者は2019年に夏学の校長を務めたのち,2020年から2年間,関西支部の支部長を務めた.今回は筆者が支部長を務めた2年間の関西支部の取り組みを報告していく.

活動報告 1.関西支部セミナー(2020年度に開催)

2020年度は研究紹介や周辺分野の論文紹介をする関西支部セミナーを企画した.関西支部の実行委員および支部長が主に関西で活躍する若手研究者に,質疑応答含め最大1時間ほどの講演を依頼した.主な参加者としては関西支部の実行委員を含めた大学院生・研究員といった若手研究者が多い.2020年度に開催した関西支部セミナーの内容を以下に示す(敬称略).

2020年度 第1回(7月12日)

・「光作動性リガンドを用いたGPCRの時分割構造解析―博士進学とこれから―」荒谷剛史(京都大学・D1)

・「各大学の研究状況について意見交換」新型コロナウイルスの感染防止に向けた参加者の所属における取り組みと,今後の研究・修学の方策について議論した.

2020年度 第2回(10月4日)

・「運動能の進化から見るスピロプラズマの運動―細菌アクチンによるらせん反転遊泳―」高橋大地(大阪市立大学・D1)

2020年度 第3回(12月12日)

・「マクロな環境をミクロにみる―超高感度固体NMRによる試料内偏極不均一性の検出とその生物物理学的応用の可能性―」杉下友晃(大阪大学・特任研究員)

・「脂質二重膜の物理的状態の精密制御を目指して~生物活性ナノ材料によるアプローチ」延山知弘(筑波大学・学振PD)

いずれも時代の最先端を担う大変興味深い内容ばかりで,X線結晶構造解析・高磁場NMR構造解析・ナノマテリアルといった幅広い分野を理解する機会となった.

2020年度の関西支部の実行委員は京都・大阪・神戸の大学に在籍していたため,プチ旅行も兼ねて各大学が持ち回りでセミナーを開催する計画をしていた.というのも筆者が支部長を引き継いだ時点までのセミナーは対面で開催されており,講義聴講以外にも開催地の施設見学や,セミナー後に企画される懇親会での情報交換も重要な目的であったためである.しかし,新型コロナウイルスパンデミックの影響で現地開催が極めて困難になったため,Zoomを用いて全てのセミナーを開催することとなった.一方で,参加者数については第1回が7名,第2回は9名,第3回は17名と回を重ねるごとに参加者が増えていった.それまでの関西支部は5,6名ほどの参加者だったので,より多くの参加者を募ることができた.これは,オンライン化に伴って参加のハードルが下がったことも一因と考えられる.今後も,この関西支部セミナーは関西支部の活動の中心として継続したいと考えている.

活動報告 2.医薬学×生物物理 異分野交流セミナー(2021年度に開催)

筆者は,京都大学の医学・薬学系の分野を対象とした卓越大学院プログラムである「京都大学メディカルイノベーション大学院プログラム(MiP)」4)を履修しており,そのつながりでMiP所属の教員の方々と交流する機会があった.MiPは異分野交流を重要な位置付けとしている一方で,関西支部は幅広い分野を包含する生物物理学を発信していきたいと考えてきた.そこで,本イベントを共催させていただくことになった.2020年度は,小規模な会を不定期で複数回開催する形をとっていたが,2021年度は本企画に集中することで,若手の会の支部活動として比較的大きな企画運営を行うことを目指した.

―開催概要―(2021年12月4日@Zoomライブ配信)

〈関西支部より招待,敬称略〉

・「分子動力学シミュレーションと実験の融合による生物物理学研究」寺川剛(京都大学・助教)

・「内在性アゴニスト結合型スフィンゴシン-1-リン酸受容体S1PR3の結晶構造解析」前田信太朗(京都大学・D4)

・「皮膚疾患の環状紅斑の拡大を対象とした数理解析による炎症調節機構の解明」須藤麻希(大阪大学・D2)

〈MiPより招待,敬称略〉

・「予測的行動を可能にする前頭皮質の予測的価値表現」濱口航介(京都大学・講師)

・「炎症刺激下における14-3-3を介したRNA分解酵素Regnase-1の制御機構」赤木宏太朗(京都大学・研究員)

・「C型ナトリウム利尿ペプチドは成長板軟骨細胞においてCa2+流入を介して骨伸長を促進する」宮崎侑(京都大学・D3)

関西支部が招待した登壇者からは構造生物学,シミュレーション,理論計算といった様々な生物物理学を紹介していただいた.また,MiPが招待した登壇者からは分子動態,高次脳機能,免疫,病理といった医学・薬学の研究を紹介していただいた.登壇者を含め約40名が参加し,各講演後には盛んに質疑応答が交わされた.参加後アンケートでも「普段触れることのできない分野の話をわかりやすく聞くことができた」などの好評の声を多くいただいた.これまでにない新たな試みであったが,今後もこのような会を企画し,研究者交流の場を提供していきたいと考えている.

「医薬学×生物物理 異分野交流セミナー」運営メンバー,講演者,先生方と撮影した集合写真

活動報告 3.関西支部公式Twitterの開設

これまでは関西支部の活動の告知として主に関西支部メーリングリスト(連絡先:bpwkansai@gmail.com)を運用してきた.関西支部の活動に興味のある方は,本メーリスに登録をさせていただくので,ぜひ本アドレス宛にご連絡いただきたい.これまで関西支部セミナーの開催告知は数十名が参加する関西支部メーリングリストで行っており,その他研究員公募の告知や登録者の所属大学で行われる研究イベントの告知など,幅広い情報を扱ってきた.

2020年からは,関西支部の活動をさらに広く知ってもらうために,関西支部公式Twitter(TwitterID: @bpkansai)を開設した.呟く内容としては関西支部セミナーの告知がメインである.前述したセミナーの開催宣伝の際は,ツイートに返信(リプライ)する形で,演題に関する短い要旨もツイートすることにより,セミナーに興味を持っていただけるようにした.また,若手の会全体のアカウント(TwitterID: @bpwakate)にも宣伝ツイートを引用してもらうなどして,より広く発信を行った.それらの活動が功を奏してTwitter経由で多くの方に関西支部の活動を知っていただくことができ,結果として参加者を増やすことができたと感じている.今後も効果的に活動告知をしていくことは重要であると考えており,若手の会内で連携しながらメーリングリスト参加者・Twitterフォロワーを増やしていきたいと考えている.

あとがき

2022年からは大阪市立大学の高橋大地に支部長を引き継ぐことになったため,この記事の執筆が支部長としての最後の仕事となった.支部長になった当時はどんな形であれ,セミナーを継続させていくことが念頭にはあったが,生物物理学のアウトリーチや発展を目指して活動してきたつもりであるし,それが実行できたのであれば何よりである.現在の日本生物物理学会には関西支部がないため,この若手の会の関西支部が今後の関西の生物物理を発展させられるような存在になってほしいと思っている.最後に,支部長在任中にお世話になった関西支部の実行委員の皆様,若手の会役員の皆様,異分野交流セミナーで一緒に企画していただいたMiPの職員の皆様,講演していただいた登壇者の皆様にお礼を述べさせていただきたい.

文献
 
© 2022 by THE BIOPHYSICAL SOCIETY OF JAPAN
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