セントラルドグマに関連する多くのタンパク質は多様なβバレル構造を構成要素としている.これらは部分的な類似性があることからこれまで進化的関連性が示唆されてきた.一方,著者らは,その進化の実験的再現に取り組み,4つのβバレル構造が分岐進化してきた可能性を見出したので,本稿で紹介する.

全ての細胞は膜をコンパートメントとして利用し分裂増殖していくが,ではその膜コンパートメントの分裂系は物理的・分子的にどこまで単純化できるのだろうか?我々は膜内外の濃度勾配と浸透圧を利用することで,化学反応や機能性分子の力を借りずに自発的に分裂増殖できる新たな膜コンパートメント系を見出した.

タンパク質の液液相分離は,核小体などの膜のない細胞小器官の形成原理として提案されており,その主要な駆動力は天然変性領域のアミノ酸残基間の相互作用だと考えられている.本研究では,天然変性領域のポリマーモデルの計算機実験と理論的解析により,相分離のしやすさや相分離液滴の共存状態を決定するアミノ酸配列のルールを明らかにした.

通常,リシンの側鎖のアミノ基は,プロトン化され正電荷を持ち(+NH3)水素結合のドナーとして働く.筆者らは,リシン側鎖のアミノ基が脱プロトン化され中性(NH2)となり,近傍のNH基に対してアクセプターとして水素結合を形成することを見出した.この新奇な水素結合のNMRによる直接観測について紹介する.

溶媒緩和特性を持つ3種の蛍光分子を用い,脂質膜内での位置に応じた特性解析を実施した.時間分解蛍光測定におけるDecay-associated spectra解析にデコンボリューションを組み合わせることで,系中に存在する蛍光成分を分割することに成功した.本手法は溶媒モデルに基づく帰属により,脂質膜中の異なる深さ位置での特性の違いを明らかにできる.

特定の物をつかむ,というのは,人の基本的な運動の1つであり,UFOキャッチャーで遊ばれたことがある読者も多いであろう.筆者らは,分子レベルでその機能を実装するための第一歩となる実験を行った.今後,分子ロボットへと発展していくことを期待したい.

生物が持つ脂質多様性を明らかにする技術としてリピドミクスがある.我々は脂質多様性の生物学を切り開くため,前処理,クロマトグラフィー,質量分析,そしてインフォマティクスの技術開発を行っており,本稿にて最新の研究を紹介する.

アクトミオシンの束構造であるストレスファイバーにおいて,アクチン線維間の架橋タンパク質がミオシン活性に伴う構成線維の流動を抑制していることが明らかとなった.これにより,ストレスファイバーに沿ったミオシン収縮力の伝達効率が向上し,細胞外基質への牽引力の印加と基質硬度の感知に寄与することが示唆された.

PTH及びPTHrPは骨粗しょう症患者に対する有効な治療薬及び治療薬候補であり,PTH1受容体を活性化し骨形成を誘導する.その一方で,これらの薬剤は副作用となる骨吸収を併発するため骨吸収を抑えた骨形成薬の開発が期待されている.本項では立体構造に基づく,PTH1受容体の活性化機構と骨吸収/骨形成作用のスイッチについて紹介する.
