AlphaFoldは高精度なタンパク質構造予測AI技術として強力であるが,特定の構造状態への予測バイアスが存在する.本総説では分子動力学シミュレーションと組み合わせこの困難を克服する方法を紹介する.この方法は複数構造状態を効率的に探索し,状態間安定性を変化させる変異候補等の有益な情報を提供する.

物理的にデザイン可能なタンパク質の立体構造の条件とはいかなるものだろうか? 本稿ではこの質問に対する答えを示す理論と,この理論を用いて予測したデザイン可能な新規フォールド構造をもつタンパク質を実際にデザインし,実験した研究を紹介する.

微生物(クラミドモナス)の推進力を直接駆動源としたバイオハイブリッドマイクロマシンの作製を行った.鞭毛の運動を阻害せずに捕捉可能な構造を開発したことでマイクロマシンへ組み込むことができた.クラミドモナスの運動の観察ツールや薬剤スクリーニングのツールとしての展開も期待される.

我々は,多繊毛上皮細胞における繊毛協調運動の基盤となる基底小体(BB)と基底足(BF)の秩序化過程を遺伝子改変蛍光標識マウスと高解像ライブイメージングで可視化し,細胞の分化段階に応じてアピカル細胞骨格である微小管と中間径フィラメントがBB-BFの配列・配向の秩序化の確立に寄与することを明らかにした.

自己駆動粒子は外力なしにエネルギーを獲得・散逸して動く非平衡開放系であり,その点で生物運動と共通する.そのため化学機械エネルギー変換や環境応答を人工的に再現し,その特性を理解するための実験モデルとして用いられる.本稿では,対称性をキーワードに,基本的な考え方と具体的な実験系について紹介する.

微小遊泳体(マイクロスイマー)が流体中で泳ぐための基本原理は,時間反転対称性を破った非相反変形であり,これは帆立貝定理という名で知られている.微小遊泳体の流体力学とその幾何学的な理論形式,そして流体中の微小遊泳体を「物質のある種の非平衡状態」として記述する奇弾性理論をそれぞれ簡単に解説する.

マイクロスイマーは非ニュートン流体中を遊泳し,その運動原理は物理学と生物学の双方で重要な役割を果たしている.本稿では,粘弾性流体,シアシックニング・シニング流体といった代表的な非ニュートン流体中でのマイクロスイマーの遊泳速度に焦点を当て,速度向上をもたらすメカニズムを体系的に概説する.

生体分子モーター,繊毛,遊泳細胞.物体としての大きさや働く階層は全く異なる三者であるが,それぞれ自己駆動する自律運動素子である.各々が多数集まって協働することで,単体からでは予想できない生物学的機能を発揮する事例を紹介し,流体を介したアクティブマターの視点でそのエッセンスを議論する.

環境の勾配に応答して適切な条件の領域に集まる機能は走性と呼ばれる.本稿では,質点と見なせるほど小さな大腸菌が実現する走化性の戦略を,水面滑走する自己駆動粒子で再現した実験,その仕組みを説明する簡単なランダムウォークモデルを用いた数値計算,そして実験結果と数値計算結果の整合性について紹介する.

生命体は,非平衡条件下での分子の構造変化の繰り返しによって運動性を発現している.同様の運動を人工系で実現することは困難であることは良く知られている.本稿では,合成分子の構造変化が集団的に振る舞うことで実現した,有機結晶の自己継続的なフリップ運動と自律遊泳について紹介する.
