モンテカルロ法を用いた構造分布の生成において,試行に用いる構造をニュートンの運動方程式など決定論的手法に従って用意する手法.分子凝集系などの複雑な系に対して,効率的に構造空間探索を行えると期待される.(216ページ)(栗﨑,田中)
分子が分子間相互作用により花びらのように円状に集合化することで形成される分子集合体をロゼットと呼ぶ.建築などで用いられる円花飾り(rosette)と似ていることに由来する.(219ページ)(佐藤,金原)
タンパク質のように,単独分子で折りたたむことにより立体的な規則構造(高次構造)を形成する人工分子をフォルダマーと呼ぶ.らせんやβシート状の構造を形成するものなどが報告されている.(219ページ)(佐藤,金原)
アミロイド線維の形成が,モノマーから凝集核への自発的な構造転移(核形成)と,核による自己触媒的な線維構造への転移(線維伸長)の2つの反応から成ると仮定したモデル.(224ページ)(水口(深瀬)ら)
反応速度定数kが活性化ギブズエネルギー(反応物と遷移状態のギブズエネルギー差)ΔG*で規定されると仮定したEyringの式に基づいて,縦軸にln (k/T),横軸に1/Tをとったプロット.このグラフの傾きから活性化エンタルピーΔH*が,y切片から活性化エントロピーΔS*がそれぞれ求められる.(225ページ)(水口(深瀬)ら)
タンパク質のフォールディング/アンフォールディング過程において生じ得る準安定な状態の1つ.コンパクトな形状のなかに二次構造は保っているが,側鎖の特異的なパッキングなどの三次構造は失われた状態.(233ページ)(矢木,加藤)
高分子などのコロイド粒子同士が溶液中で濃縮され,相分離することで形成される微小液滴であり,他の物質を取り込む性質を持つ.(233ページ)(矢木,加藤)
観測データとシミュレーションとを融合するデータ同化手法の有効性を検証するために行う数値実験.実際の観測データの代わりに,シミュレーションから疑似的に生成した観測データを用いるため,シミュレーション結果の答え合わせをすることができる.(235ページ)(渕上)
シナプス伝達が一過性の入力の頻度の上昇により長期にわたり増強される現象.記憶の細胞モデルと考えられる.シナプス後部へのCa2+の流入により,情報伝達系が活性化され,最終的にはシナプス表面グルタミン酸受容体が増加する.(239ページ)(後藤,林)
核スピン数が1/2より大きい核種を四極子核と呼び,それらを測定対象とする核磁気共鳴(NMR)測定のこと.NMR測定が可能な核種のうち八割弱は四極子核である.固体状態の試料を測定することが一般的である.(242ページ)(山田)
原子核固有の四極子モーメントと原子核の位置における電場勾配との核スピン相互作用.核四極相互作用の大きさは他の相互作用に比べて大きく,固体NMRスペクトルにおける線幅の主要因となる場合が多い.(242ページ)(山田)
磁気モーメントと角運動量を有する核スピンを静磁場中におくと,核スピンのエネルギーがいくつかの準位に分裂する.これをゼーマン分裂もしくはゼーマン相互作用と呼ぶ.NMR測定では,これら準位間における共鳴遷移を観測する.(244ページ)(山田)
日本語ではしばしば牽引力顕微鏡と訳される.元々は移動性細胞が細胞後端を移動方向へ引き寄せる力を対象としたことから牽引の言葉が用いられたと考えられる.細胞外基質の変形を測定し,細胞が発生する力を推定する技術.(246ページ)(出口ら)