2022 年 62 巻 4 号 p. 255-256
はじめまして.今年から生物物理若手の会関東支部長を務めております,妹尾史織と申します.生物物理若手の会会長の山戸奈々さんから執筆の機会をいただいたことに感謝します.若手の会だよりの存在を知った時から,いつか寄稿してみたいと思っていたので,とてもうれしいです.内容としては,これまでの私を振り返りながら,その中での生物物理若手の会との出会いおよび生物物理若手の会での交流・運営貢献などのエピソードを執筆させていただきます.
中学進学時に科学部に入部したことをきっかけに,実験および研究にのめり込むことになりました.中学1年生の時は,銀鏡反応でスライドガラスの鏡を仲間と作成したり,ペーパークロマトグラフィーでペンのインクの成分の解析を試みたりと,小さな実験をいくつか行っていました.とっかかりはやはり派手な実験でしたが,研究発表の場に行った際,原理を追求することを目的とした実験系に興味を持ち,化学的に解析・考察する実験へシフトしていきました.そこで中学3年生の時から,屈折式糖度計を用いた濃度測定法の開発をテーマとした研究を始めました.2年半かけて簡易な測定で物質の濃度を精度良く得られることを明らかにし,日本学生科学賞東京都大会で奨励賞を受賞したことは思い出に残っています.論理的に実験結果を解析する力が養われたことはもちろん,実験および研究のおもしろさに引き込まれ,自然に研究者を目指すようになりました.
大学に進学してからも,方法の適用範囲を広げたり,より精度の高い手法にしたりしたいと考え,大学2年まで継続して自主的に自由研究を行いました.具体的には,大学で行われている「溶解度の温度依存性と溶解熱」を考察する学生実験をより簡便に,また,多種のデータを集めることのできる方法を閃き,屈折計を用いた実験を行い,実証をしました.本テーマでサイエンス・インカレに出場し,その成果を発表しDERUKUI賞を受賞しました.その際,(出る杭は打たれると言いますが)打たれても粘り強く再度出ることが何に対しても重要だと痛感しました.また,大会中に意識の高い優秀な他大学の学生と交流することによって感化され,球状分子集合体(界面活性剤ミセル・脂質二分子膜小胞)界面における物質透過速度解析1)をテーマとしたサイエンティフィックな研究活動を自ら進んで始めました.ただただ楽しくてがむしゃらに実験していた記憶がありますが,学部3年秋にCSJ化学フェスタでポスター発表賞を受賞するなど結果がついてくるのも非常にうれしかったです.当時の指導教官に,「習得」と「修得」の違いについて,熱く指導されたことが非常に心に残っています.技術を学ぶこと(習得)は大事であるが,その次には研究姿勢・自身のポテンシャルを上げること(修得)が必要であると大きな課題をもらいました.以後,研究の奥深さを知り,どっぷり浸かっていくことになりました.
研究を進めるうちに,より生体に近い分子への応用に興味を持ち,大学院では,細胞をはじめとする生体を扱い分析化学的な研究を行うことのできる研究室で研究をスタートしました.「熱遺伝学的アプローチ」が私の大きなテーマでした.熱を加えることで,標的タンパク質の細胞内局在を任意のタイミングで制御するという興味深い研究です.ここに来て初めて,プラスミドDNAや細胞の扱いなどを学ぶことになりました.なんとかまずは「習得」しようと必死に取り組みました.そんな中,生物物理若手の会とのご縁がありました(後述).そして,生体を実験で扱う難しさを非常に痛感し,共感しました.例えば,細胞を使うには培養しなければならないですし,遺伝子導入して観察するのも一苦労です.第一に時間がかかる,第二にコンディションの管理が難しい,第三に得られる結果のばらつきが大きいといったところでしょうか.しかしながら,複雑な系で実験することで,反応挙動の本源に少しでも迫れているとの実感もあります.
生物物理若手の会を知ったのは,第60回生物物理若手の会夏の学校(夏学)2)の情報を先輩からいただいた時です.コロナ禍での最初の夏で,参加費500円のオンライン開催で都合が良いと思い,軽い気持ちで参加を決めました.夏学初日は勉強になりそうだと画面の前で緊張していましたが,ユーモアのある講師の先生方の講義や参加者との交流会であっという間に打ち解けました.会長であられた篠元輝さん,校長(のちに会長)であられた石坂優人さんに声をかけて絡んでいただき,夜遅くまでZoom交流会で研究のみならず若手の会のお話を伺いました.研究に立ち向かう仲間がたくさんいることに感動し,共感してもらえることがうれしかったことを今でも覚えています.
すっかり若手の会の虜になってしまい,来年はスタッフとして参加したいと決意しました.関東支部長であられた上杉里瑛さんの猛プッシュの賜物でもあります.私は夏学スタッフとして会計を担当することになりました.(その際,一緒に会計を担当していたのが会長になられた山戸さんでして,改めてすごい巡り合わせだと思います.)会計のお仕事は,予算案作成・若手の会の口座開設・お金の流れの管理など.一見地味ではありますが,どの時期もコンスタントにタスクがあり,素早い対応が求められる重要なお仕事でした.また,他の担当が人手を必要とする際はできる範囲で率先して手伝いました.1年かけて入念に準備しただけあり,秋山校長率いる第61回生物物理若手の会夏学3)は大変盛り上がり参加者満足度も高かったです.私自身は,講義で勉強することに加え新たな知り合いを作ることができ,当日はお祭りのように楽しみました.オンラインではあるものの,夏学を作り上げたスタッフ仲間との絆は宝物になりました.夏学が終了した後,スタッフ仲間と直接お会いしたり,オンラインでお話したりと交流は現在も続いています.こうした仲間を得られたことは大きな収穫ですし,とても心の支えになっております.
若手の会を知って間もない頃,ちょうど輪読会4)が立ち上がったばかりで『細胞の理論生物学:ダイナミクスの視点から』という本を題材にして勉強をしていました.その参加者のつながりで,特別企画5)主催の黒川南さんから運営スタッフのお誘いを受け,ありがたく引き受けさせていただきました.
2020年の特別企画は女子学生中心の会で,テーマは「普段はなかなか話せない女子の悩みを共有しよう」というものでした.まわりに相談できるリケジョが少なくて困っている,そんなお悩みを共有する場でした.私の役目は参加者のお悩みを引き出す火付け役だったのですが,一つ話し始めれば次から次にお悩みが沸いて出てきてとても盛り上がりました.そこで私が感じたのは,男女平等を目指していてもどうしても研究生活を送る上で差や悩みは生じてしまうということでした.やはり,研究室という環境がまだ少々男性社会寄りであったり,そもそも男性と女性で身体のつくりが違うので問題を解決することは非常に難解です.しかしながら,第一歩としてこのように悩みを共有して,解決策を模索することの必要性を大きく感じました.
2021年の特別企画はキャリア支援会と間口を広げ,テーマは「研究生活とヘルスケア・ライフステージとの向き合い方」で行われました.ヘルスケアのグループワークでは,タスクマネジメントや息抜き・リフレッシュ法について活発に議論されて盛り上がりました.私は研究に没頭すればするほど集中してまわりが見えなくなり,つい無理をしてしまいますが,これはあるあるのお悩みだそうです.最低限できたら良いとする,食事・運動・睡眠をまず意識的に行うなど,実体験に基づき相談やアドバイスをしあうことができました.ライフステージに関しては,結婚・妊娠・出産などセンシティブかつプライベートな話題なため話しにくい方も多く,悩みを共有して解決策を模索することの難しさを大きく感じました.しかし,私を含め救われたとの声も多く聞かれました.今後も悩みを打ち明けられる場をあきらめずに作っていきたいです.
生物物理若手の会で出会った方とのご縁を大切に,出る杭として自分の活躍できるところで邁進して参りたいと強く思います.