生物物理
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2022 年 62 巻 5 号 p. 305-306

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De novo設計 De novo design

自然界に存在しない新規物質を設計する手法のこと.特にタンパク質工学においては,アミノ酸配列を一から設計し,特定の構造や機能を持つタンパク質もしくはポリペプチドを作製する手法として使われる.(271ページ)(清水ら)

固相合成(固相合成法) Solid-phase synthesis

ポリマー等の支持体に分子を固定化し,支持体上で溶媒中の試薬と反応させる合成手法.ペプチドの合成手法として広く利用される.液相合成法と比較し,反応溶媒中の副生成物や不純物の中から目的の生成物のみを回収しやすい.(271ページ)(清水ら)

Snorkeling効果 Snorkeling effect

脂質膜の親水疎水界面に存在するチロシンやトリプトファンが膜タンパク質の膜中構造を安定化させる作用のこと.例えばチロシンの水酸基は脂質親水部と,芳香環は脂質疎水部と相互作用するため,膜タンパク質を脂質膜内にとどめるアンカーとして働くと考えられている.(272ページ)(清水ら)

液滴接触法 Droplet contact method

平面脂質二分子膜を簡便に作製する方法.リン脂質分子を分散させた有機溶媒中に液滴を滴下するとその表面に単分子膜が自発的に形成される.その後,この2つの液滴を接触させることで脂質二分子膜の形成が可能である.(273ページ)(清水ら)

クロマチン Chromatin

DNAにタンパク質が結合した複合体のことを表す.真核生物の核内では,DNAはヒストンに巻き付き折りたたまれており,さらに相互作用分子が結合し,複雑なクロマチン構造を形成する.(280ページ)(原)

核ラミナ Nuclear lamina

真核細胞の核膜の内側に存在する,厚さ30-100 nmの構造.中間径フィラメントのラミンタンパク質や膜結合タンパク質により構成される.核ラミナを構成するタンパク質は生物種により異なり,特にラミンは後生動物のみに存在する.(281ページ)(原)

ゲノムサイズ Genomic content

生物を構成する細胞がもつゲノムの大きさ(総塩基数).ヒトの場合は,約3.0 × 109塩基対(3.0 Gbp).本総説では,細胞内のDNAの量を表す指標として用いている.(281ページ)(原)

核外移行シグナル Nuclear export signal

核外搬出シグナルとも呼ばれる.核内から核膜孔を介して細胞質に搬出されるタンパク質に保存されるコンセンサス配列である.(288ページ)(長崎,上田)

アクチンの翻訳後修飾 Post-translational modification of actin

アクチンはリン酸化やアセチル化をはじめ様々な翻訳後修飾を受ける.特にN末端の翻訳後修飾はアクチンサブタイプ間で異なり,サブタイプの機能的多様性に寄与していると考えられている.(289ページ)(長崎,上田)

複製起点 Origin of replication, ori

細胞分裂に先立って行われる染色体の複製は,染色体上の特定の箇所から始まり,双方向に進展する.この複製の開始点を「複製起点」という.複製起点は,細菌,アーキア,真核生物の全てで存在するが,細菌は通常1つしか複製起点を持たないのに対し,アーキアは複数,真核生物は多数を1本の染色体中に持つなど,特徴は大きく異なる.(293ページ)(竹内,嶋屋)

Monodの式 Monod equation

微生物の成長率λと基質濃度Sを関係づける経験的な式.Kを定数とし,λS/(K + S)で与えられる.細菌をはじめとする種々の微生物で成り立つことが報告されている.式の形は酵素反応速度に関するMichaelis-Mentenの式と同じだが,記述対象が全く違うことに注意.(293ページ)(竹内,嶋屋)

PDMSシート Polydimethylsiloxane

PDMSはシリコーンの一種.polydimethylsiloxaneの他,dimethylpolysiloxane とも呼ばれる.細胞1つが通れる程度の流路など微細構造を製作するときの材料として使用される.粘弾性を調節したシート状に製作し細胞を接着させる基質として使用することもできる.(295ページ)(沖村,岩楯)

平均力ストリング法 Mean-force string method

タンパク質などの2つの構造状態間での構造変化の最小自由エネルギー経路を探索する方法の1つ.計算方法は経路内に用意された複数のイメージに対して同時に自由エネルギーを最小化して経路全体を最適化する.(298ページ)(小林ら)

蛍光相関分光法 FCS: Fluorescence correlation spectroscopy

液体中の分子拡散測定法の一つ.微量の蛍光分子を含む媒質中のサブfL程度の微小領域を照明し,照明領域への蛍光分子の出入による輝度揺らぎから自己相関関数を求め,拡散係数を得る.(解説記事https://doi.org/10.2142/biophys.59.125に詳しい)(301ページ)(渡邊)

A/P/Eサイト A/P/E site

リボソームの活性部位でtRNA結合部位.まず伸長tRNAがA(Aminoacyl)サイトに運搬される.ペプチド転位反応によりP(Peptidyl)サイトでペプチジルtRNAが形成される.ペプチド転位反応で不要になったtRNAはE(Exit)サイトから放出される.(303ページ)(丹澤)

脱アシル化tRNA Deacylated tRNA

脱アシル化とはアミノ酸非結合状態を指す.翻訳時にリボソームでペプチド転移反応が起きると,PサイトのペプチジルtRNAに結合したポリペプチド鎖がAサイトのアミノアシルtRNAに受け渡されることで,P-tRNAが脱アシル状態になる.(304ページ)(丹澤)

アンチコドンステムループ Anticodon stem loop, ASL

tRNAの三次構造はL字型を形成するが,アンチコドンステムループはこのL字型の長い方の先端領域を指す.このステムループ中にmRNAのコドンと塩基対を形成するアンチコドン(一般には34位から36位)が含まれる.(304ページ)(丹澤)

アクセプターステム Accepter stem

tRNAのL字構造の短い方でアンチコドンステムループの真逆に位置する.5ʹと3ʹ末端が対合しらせん構造を形成する.3ʹ CCA末端はアミノアシルtRNA合成酵素によって,アンチコドンに対応するアミノ酸と共有結合を形成する.(304ページ)(丹澤)

 
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