生物物理
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巻頭言
思春期
青木 一洋
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2022 年 62 巻 6 号 p. 323

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コロナ禍以来の初対面ミーティングで出会った知り合い(生物物理学会員)の第一声は,「青木さん,思春期だね!」であった.久しぶりの対面の学会でTPOを勘違いし,Tシャツ綿パンというラフな格好で参加したため,ストリートでスケボーしている兄ちゃんのような見た目になってしまっていた(反省).しかし,思春期と言われて思い当たる節がある.

私は今の所属で2016年から独立させていただき,研究所/センターの運営と自分の研究室の運営に携わってきた.前者に関しては,諸先輩方の多大なサポートを受けながら,ファカルティのメンバーとして一定の役割をこなしてきた(おかげさまで,この数年で爆発的に白髪が増えた).この場を借りて,感謝申し上げたい.一方,後者である自分の研究室の運営に関しては,正直に暴露すると,思春期まっしぐらである.大学院生・研究員の指導,研究費の確保,論文書きなど目に見えることはなんとかやれている(と思っている)が,思春期っぷりを発揮しているのはラボの方向性をどうしていくべきかという自分探し的なやつである.独立してからいろんなことに手を出してきたが,その結果として研究テーマが散漫になっていないか,研究室の方向性がぶれていないか,と常に悩んでいる.私は独立するときに,故月田承一郎先生のつぶやき(「尽きたさんのつぶやき3」でググってください)にある「グループとしての統合性を失わない範囲で個を自由にするという方向でグループとしての成果を得る」を目指そうと考えた.元ボスを含めて尊敬している研究者はおおむねこのような研究姿勢で研究室を運営している人が多く,自分もそれに倣いたかったのである.ただ,月田さん自身も言われているように,このやり方はとても苦しい.個を活かしながらもグループとしての成功を目指すという最適化問題を常に変化する境界条件下で解かねばならず,個とグループの成果や方向性のバランスをとるのが難しいということがこの数年で理解できた.こういった話を今をときめくキラキラ若手研究者や先輩方にすると,多かれ少なかれ悩んでいて,みんな思春期なんだなぁと少し安心しているが,それでも私の思春期は当分続くだろう.どこかで会ったときには私の愚痴を聞いてアドバイスをいただきたい.

ちなみに,思春期と声をかけてくれた方は,「私は思春期を通り越して,悟りを開きつつある」と言っていて,ちょっと何を言っているのか私には理解できなかったが,「マジ,スゲーっす!」とスケボーやってる兄ちゃんのように返事をしておいた.

 
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