生物物理
Online ISSN : 1347-4219
Print ISSN : 0582-4052
ISSN-L : 0582-4052
談話室
第二十回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム報告
須藤 雄気原田 慶恵
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 63 巻 1 号 p. 39-40

詳細

1.  男女共同参画学協会連絡会と生物物理学会

21世紀に入り,男女共同参画の重要性と必要性が広く社会的に認知され,学協会においても具体的な取り組みへの機運が高まっていた.そこで,2002年10月7日に,14の理工系学協会が中心となり,男女共同参画学協会連絡会(Japan Inter-Society Liaison Association Committee for Promoting Equal Participation of Men and Women in Science and Engineering: EPMEWSE)(以後,学協会連絡会と略す)が設立されることとなった.日本生物物理学会は,設立時メンバーとして継続的に活動に参画している.当時の社会的背景や設立の経緯の詳細等については,他の記事をご参照頂きたい1)

設立以来,学協会連絡会は,科学技術の分野において,女性と男性が共に個性と能力を発揮できる環境づくりとネットワークづくりを目的に,政府への提言・要望を含めた多様な活動を行っている.この間,加盟学協会は増え続け,現在は54の正式学協会と66のオブザーバー学協会の計120の学協会が所属する一大組織となっている(https://djrenrakukai.org/).2021年からは一般社団法人として,より社会的な立場と責任を明確化した活動を行っている.

学協会連絡会は,1年任期の幹事学会を中心に運営されており,生物物理学会は,美宅成樹氏(委員長),栗原和枝氏・石森浩一郎氏(副委員長),原田慶恵(広報委員)のもと,第五期(2006年10月7日~2007年10月5日)の幹事学会をつとめた.2021年11月1日からは,第二十期の幹事学会を担当することとなり,原田(委員長),須藤雄気(副委員長),根岸瑠美氏・今田勝巳氏(運営委員)のもと運営されている.

2.  第五回科学技術系専門職の男女共同参画実態調査

学協会連絡会では,科学技術系専門職における男女共同参画について,「技術者・研究者のコミュニティのおかれている現状を把握し,課題を抽出して提言をまとめること」を目的に,概ね五年ごとに男女共同参画実態調査(通称,大規模アンケート)を実施している2),3).これは,定期的な調査解析により技術者・研究者がおかれた現状を継続的にとらえ,男女共同参画に関する法律や施策等,時代の動きに即応した意識調査を行うことで,政府事業の効果を検証し,新たな政策提言につなげることを意図して行っているものである.実際に,これまでの大規模アンケートの報告書は,各種要望書のエビデンスとして活用され,また文部科学省や内閣府男女共同参画局の様々な報告書におけるデータとしても利用されている.具体的には,第五次男女共同参画基本計画(令和2年12月)や第六期科学・技術イノベーション基本計画(令和3年3月)に大きな影響を与えた.

今年度は,第五回大規模アンケートの実施年にあたり,第十九期幹事学会・日本技術士会のもと,アンケート(2021年10月20日~11月30日)が実施された.生物物理学会からは538名の回答を得た.長い(44問)アンケートにお答え頂いた方々にこの場をお借りして感謝したい.生物物理学会は,その後の解析を学協会連絡会の多くの方々のご協力を得ながら行い,2022年8月に252ページにわたる報告書をとりまとめた.(https://djrenrakukai.org/doc_pdf/2022/5th_enq/5th_enq_report.pdf).

3.  第二十回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム

学協会連絡会では,男女共同参画に関する話題に関するシンポジウムを年に一度開催している.本年は,「男女間の積極的格差改善措置(女性限定公募・クオータ制など)について考える~より公平な社会の実現を目指して~」と題して,2022年10月8日に東京大学本郷キャンパス武田ホール(+オンライン)で開催された.シンポジウムでは,開会挨拶(原田)と,小池百合子氏(東京都知事)によるビデオレターの後,先述の大規模アンケートに関する報告を,学協会連絡会の須藤(全体),岡田住子氏(自由記述),志牟田美佐氏(提言・要望)が行った.その後,生物物理学会(今田氏,杉田有治氏等)を含む各学協会連絡会によるポスターセッションを行った(図1).

図1

ポスター討論の様子.

午後からは,幹事学会の生物物理学会を代表し,野地博行氏(会長)の挨拶と,岡田恵子氏(内閣府男女共同参画局局長)・阿蘇隆之氏(文部科学省・大臣官房審議官)からの挨拶を頂いた後,男女間の積極的格差改善措置(女性限定公募・クオータ制等)に関する以下の四件の基調講演を行った.

・山田秀雄氏(山田・尾崎法律事務所代表 弁護士)

「弁護士会における男女共同参画推進特別措置(女性副会長クオータ制等)の導入について」

・三浦まり氏(上智大学 教授)

「候補者均等法の可能性:数値目標の効果と課題」

・湯上浩雄氏(東北大学大学院工学研究科長 教授)

「東北大学工学研究科のDEI推進プロジェクト」

・田中沙弥香氏(一般社団法人Waffle 理事長)

「Waffleの活動と格差改善のためにすべきこと」

その後,基調講演者をパネリストとし,学協会連絡会の佐々木成江氏(お茶の水大学 特任教授)をファシリテーターとしたパネル討論を行った(図2).

図2

パネル討論の様子.左から山田氏,佐々木氏,三浦氏,湯上氏,田中氏.

世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数(2022年)では,日本は146か国中116位と先進国において最下位となっている.世界の多くの国では,男女間格差を積極的に改善することを目的としてクオータ制が導入されつつあり,日本においても女性版骨太の方針2021に「男女共同参画社会基本法に基づく積極的改善措置の在り方に関し,幅広い分野におけるクオータ制の適用も検討する」と明記された.本シンポジウムでは,クオータ制の導入,女性の積極的な登用,男女間格差改善のための活動に関わっている幅広い分野の方々からお話を伺ったが,その分野の違いにも拘わらず,多くの共通した課題が存在することがわかり,より公平な社会の実現について共に考える良い機会となった.シンポジウム開催にご協力頂いた田端和仁氏・岡部弘基氏(東京大学)をはじめ関連研究室の皆様,ご講演者および佐々木氏に深謝いたします.

文献
  • 1)   宇高 恵子(2004)生物物理 44, 290-291. DOI: 10.2142/biophys. 44.290.
  • 2)   国岡 由紀(2005)生物物理 45, 219-223. DOI: 10.2142/biophys. 45.219.
  • 3)   栗原 和枝(2011)学術の動向 16, 59-63. DOI: 10.5363/tits. 16.8_59.
Biographies

須藤雄気(すどう ゆうき)

岡山大学学術研究院医歯薬学域教授

原田慶恵(はらだ よしえ)

大阪大学蛋白質研究所教授

 
© 2023 by THE BIOPHYSICAL SOCIETY OF JAPAN
feedback
Top