Seibutsu Butsuri
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2023 Volume 63 Issue 5 Pages 285-286

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支部長のあいさつ

名古屋工業大学の古谷祐詞と申します.2023年5月から2年間の任期で中部支部長に選出されました.よろしくお願いいたします.ロドプシンの光反応を赤外分光法で解析する研究を行っています.分子の微細な振動変化により,プロトン移動やイオン輸送,情報伝達にかかわるアミノ酸側鎖の構造変化が議論できるところに魅力を感じております.最近では,ロドプシンを金薄膜に固定して,配向を制御しながら計測可能な表面増強赤外分光法や,量子カスケードレーザーを用いた時間分解赤外分光法にも挑戦しております.精製されたタンパク質をお持ちの方々はぜひ,赤外分光法の適用も検討してみてください.

今回の支部だよりの内容は,久しぶりの対面開催となった中部支部講演会の開催報告と,幹事の2名の先生方による研究室紹介となります.

中部支部講演会について

令和4年度の生物物理中部支部講演会&総会は名古屋大学の内橋貴之先生を世話人として,2023年3月31日に名古屋大学環境学総合館レクチャーホールにて講演会とポスター発表,そして生協にて懇親会を行いました.講演会のプログラムは中部支部のホームページ(http://bunshi4.bio.nagoya-u.ac.jp/~biophy-c/R4meeting.html)に掲載されています.令和2,3年度はオンラインでの開催となりましたが,今回は対面での開催ということで発表者の方々も気合いが入っているように感じました.議論も活発に行われ,休憩時間も近況報告や研究ディスカッションなどがそこかしこで行われるような状況でした.ポスター発表も時間いっぱいまで議論が行われて活況を呈しました.そして,講演会の時間が終了してからは,これからが本番と言わんばかりに懇親会会場に皆様が意気揚々と移動される姿を見るにつけて,やはり学会とはこうでなくてはと思った次第です.懇親会では最優秀発表者の表彰も行われました.受賞者(敬称略)は,名古屋大学の小崎慎也(学部4年),金岡優依(修士2年),金沢大学の喜多慎太郎(修士1年),分子科学研究所の原島崇徳(助教)です.前支部長の鈴木先生が欠席されていたために賞状は私がお渡しすることになりましたが,皆様の嬉しそうな表情に私も嬉しくなりました.これからの研究の進展を期待するとともに,残念ながら受賞に至らなかった方々はぜひ,次回以降も挑戦してもらえればと思います.今回,前支部長のご英断により,名古屋大学の託児施設を利用する際の利用料を中部支部で負担しました.オンラインでの開催から現地開催への移行に際して,若手研究者の旅費や託児施設の利用については支援していく必要があると思います.次回は金沢大学の古寺哲幸先生を世話人代表として,初の北陸での開催となります.今年度末には北陸新幹線が敦賀まで延伸される予定なので,よりアクセスが良くなることが期待されます.

令和4年度生物物理中部支部講演会の懇親会での集合写真

最優秀発表賞受賞者

研究室紹介 内橋貴之(名古屋大学生体分子動態機能研究室)

名古屋大学物理学教室には生物物理学分野として,計算生物物理(Florence Tama教授),光生体エネルギー(野口 巧 教授),細胞情報生物物理(槇 亙介 准教授),そして当研究室の4研究室があります.名大物理学教室の古来からのならわしとして研究室名はアルファベットで呼ぶべし,ということで,それぞれB,G,K,D研と呼ばれています.D研は2017年に内橋が金沢大学から異動して発足しましたが,その際に残っていたアルファベットから,研究内容と絡めて“Dynamics”の“D”を選びました.

当研究室では大きく分けて,①高速AFMを用いたタンパク質の一分子動態の計測・解析を通じたタンパク質の作動機構の理解,②高速AFMの機能拡張やAFMをベースとした新規計測技術の開発,③高速AFMの界面・高/超分子化学への応用,④ロドプシンの結晶構造解析,の4つの研究テーマを行っています.①に関してはほとんどが外部との共同研究で,いろいろな先生から面白いタンパク質試料の提供を受けて,測定から解析までを行っています.特に高速AFMデータの解析方法は確立した方法がないので,解析ソフトを独自に作りながら試行錯誤しています.②は,高速AFMと他の計測手法との複合化や,構造と同時に力学特性など物性情報のダイナミクスを計測できる新規機能の開発を行っています.悲しいかなこのテーマは最近の学生にはあまり人気がないです.③では,対象を生物にこだわらずに高速AFMの応用可能性を拡げるべく高・超分子から結晶,ハイドロゲルなど様々な試料への応用と測定法の確立を目指しています.

研究室,というか内橋のポリシーは,“見えそうなものは全部見る”,“あれこれ考えずにとりあえずやってみる”なので,高速AFMで見てみたい分子をお持ちの方,こんな測定ができないか?などご興味がある方は遠慮なくご連絡ください.

研究室メンバー+α

研究室紹介 矢木真穂(名古屋市立大学薬学部生命分子構造学分野)

名古屋市立大学薬学部は,来年(2024)年に設立140周年になりますが,私たちの生命分子構造学分野(加藤晃一教授主宰)は今年23周年を迎えました.ポストコロナ禍となり,やっと学生さんのワイワイした雰囲気が戻りつつある今日この頃です.

私たちの研究室は,名市大薬と自然科学研究機構生命創成探究センターの2か所を活動拠点としています.様々な共同研究を通じた分野横断的なアプローチにより,“内的複雑性を秘めた生命分子素子が動的な秩序を形成して高次機能を創発する仕組み”を解き明かすことを目指しています.

タンパク質や糖鎖をはじめとする生命分子は,様々な時空間スケールでのダイナミズムを発揮しており,特異的な分子間相互作用を介した超分子装置を構築することを通じて,精緻な生体機能を発動しています.私たちは,このような生命分子集団の原子レベルでのミクロな振る舞いが,一定の秩序のもとに自己組織化して細胞の活動を制御し,精神活動をはじめとする高次生体機能を発動する仕組みを統合的に理解することを模索しています.さらに,神経変性疾患のように生命システムの秩序の破綻がもたらす病気のメカニズムの解明と,それに基づく創薬を目指した研究を行っています.そのために,NMR分光法を主体とする構造生物学に加えて,分子設計・ナノケミストリーから分子・細胞・個体レベルでの機能解析に至るまで,多面的なアプローチを展開しています.最近は,生命と物質の境界に位置するような巨大ウイルスやクマムシにも着目し,生命活動を司る分子集団の構造・動態・機能の解析を通じて生命の環境適応の仕組みを理解することを目指した研究も展開しています.

生物物理学会で成果発信できるよう,皆で力を合わせて日々頑張っていきたいと思います.

ラボ23周年記念パーティーを行いました.

 
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