生物物理
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若手の会だより
若手の会だより
~女子中高生夏の学校参加レポート~
飯田 史織杉浦 雅大
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2023 年 63 巻 6 号 p. 338-339

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女子中高生夏の学校とは

「女子中高生夏の学校2023~科学・技術・人との出会い~」1)は,全国の女子中高生が,幅広い理工系の分野を知り,理工系の分野で活躍する人々と交流するためのイベントであり,今年度は8月5日-8月7日に,埼玉県の国立女性教育会館にて開催されました.今回,生物物理学会からの要請を受け,若手の会から二名が,理事の藤原郁子先生(長岡技術科学大学)とともに同イベントに参加しました.女子中高生に生物物理の魅力を知ってもらうべく,分野全体を紹介するポスターを作成し,発表に奮闘した様子を,参加した二名の感想とともにお届けします(図1).また,同イベント内の「進路・キャリア相談」のブースにも出席し,大学院生や研究者がどのような日常を送っているのか,進路選択の際に何を考えたか,などを中高生と一対一で話しました.

図1

ポスター発表の様子 左:飯田,右:杉浦.ポスター発表だけでなく,DNAのペーパーモデルの折り方の実演(飯田)およびロドプシンのpHジャンプ実験の実演(杉浦)もやりました.

生物物理の魅力を伝えました(飯田史織)

国立遺伝学研究所の前島研究室に所属する,博士後期課程二年の飯田史織と申します.生物物理若手の会では,第62回生物物理若手の会夏の学校(2022年)の教頭として運営に携わり,現在は中部支部長を務めています.

女子中高生夏の学校のポスター発表では,「“見る”ことでわかる生物物理」をテーマとし,所属研究室で現在行っているクロマチンの一分子イメージングの紹介,および,筋原線維が動く仕組み,金沢大学の古寺先生らが発表されたミオシンVの高速原子間力顕微鏡イメージングの紹介をしました.ポスター発表と合わせて,DNAのペーパーモデル2)の折り方の実演をし,中高生たちにも折ってもらいました.中高生たちに「DNAってなんですか?」と問いかけると,「遺伝子」「設計図」との答えが多かったのですが,細胞内に存在する物質としてのDNAが非常に長大であり,二重らせん構造をとること,負の電荷を持つこと,DNAの持つ負の電荷がどの程度中和されているかによって,DNAの局所的な構造や動きが変化すること,なども合わせて覚えてもらいました.クロマチンの一分子イメージングの動画を見せると,パッと目を輝かせて見入ってくれたのが印象的で,私も元気をもらいました.ポスター発表の時間は二時間弱しかなかったものの,大変盛況で,終わったあとには喋りすぎて喉が痛くなるほどでした.

ポスター発表中にもらった質問で特に多かったのは「なぜ生物物理を選んだのか」「将来はどんな仕事をするのか」といった質問でした.私は,「生き物はどうやって生きているのか」という哲学めいた問いに物理の力で迫れたら面白いのではないかと思って研究者を志しているのですが,共感してくれる学生さんも多く,将来,生物物理の世界に来てくれるといいな,と思いました.私自身が研究の道に進もうと思ったきっかけも,高校時代,某大学のオープンキャンパスで,楽しそうに研究内容を紹介する大学院生の姿だったように思います.このような機会で出会えた学生さんたちと,将来,若手の会夏の学校で,研究やサイエンスの話ができたらいいですね!

自分の高校時代を顧みると,高校生の立場からは,理系学部に進学し卒業したあと,どのようなモチベーションでどのような仕事に就くのか,なかなか想像しにくかったように思います.最近,女性研究者の割合を増やすべく,様々な取り組みが行われていますが,女子中学生や女子高校生に向けて,研究者という職業の魅力や,ライフプランとの両立可能性をアピールすることも,重要な取り組みの一つであると強く感じました.

女子中高生夏の学校に参加してみて(杉浦雅大)

私は,第62回生物物理夏の学校(2022年)の校長を務めました,名古屋工業大学大学院博士後期課程三年の杉浦雅大と申します.現在は会長として,若手の会の運営を行っており,生物物理の将来を担う若手研究者を活性化するために活動しています.その一環として,この度は生物物理学会の面白さを普及するために「女子中高生夏の学校2023~科学・技術・人との出会い~」に参加してきました.

参加者の中には,日本の名だたる研究機関等に興味を持っている学生さんや,化学オリンピックに出てみたいという意欲ある学生さんが多くいらっしゃいました.その中でも私が特に感心したのは,高校までは「生物」「物理」「化学」が教科書レベルで分けてあるせいでそれぞれの分野に壁があるわけですが,将来それぞれを二つまたは三つすべて使った研究をしてみたいと言ってくれた女子学生さんでした.

私は,光(物理)を感受する「ロドプシン」という膜タンパク質について研究しているわけですが,その初期反応はレチナールというビタミンA類縁体の光異性化(化学)から始まり,その後イオンポンプやイオンチャネル,光センサー,酵素反応を行うことで,シグナル伝達(生物)に関与します.

私が担当したポスター発表ではロドプシンに限らず,時間(概日リズム)を認識するためのタンパク質や,2021年のノーベル生理学・医学賞の対象となった温度を感受するタンパク質,磁気を感知するタンパク質といった物理の現象と生物をつなぐタンパク質に関する発表をすると,多くの学生さんに興味を持っていただけました.また,ポスターで説明した反応を実際に目で視て体験してもらえるように,まさしくロドプシンの精製試料を用いて,プロトン移動反応を実演しました.pH変化に伴って起こるプロトン移動反応によって,ロドプシンの色が劇的に変わる瞬間を見せると,女子学生さんらは目を輝かせてその反応に見入っていました.その後,実演して見せた反応が,私たちの目の中に存在するロドプシンにおいても起こっており,光を受容したのちに起こる高速なプロトン移動によって「光が見えた」という信号が脳へ伝わることを説明しました.すると,教科書で名前だけは知っていたロドプシンについて興味が沸きましたといううれしい感想も聞けました.

最後に,この女子中高生夏の学校では,未来を担う意欲ある若人が集まることで,ティーンエイジャー同士による化学反応的な交流の起点となっており,将来新たな研究が生まれる新潮流を感じとることができました.このような夏の学校に参加されている学生さんは将来生物物理学会を牽引する研究者の卵だと確信しています.よって,若手研究者の活性化を目指す若手の会として,本活動は継続していきたいと思っています.

大学進学を控える中高生さんへのアドバイス

ポスター発表をしていると,「どうやってこんな面白い研究をやっている研究室を見つけたんですか」と聞かれました.正直なところ,幼少期はとにかく興味を持ったことに取り組んでおり,大学に入るまで今の研究について全く知りませんでした3).ですので安心してください.どの大学にも面白い研究を行っている研究室は必ずあります.また,大学に入ってからやりたい研究ができたら,編入や大学院から大学を変えるという選択肢もあり,私の知人にもそのような人は多いです.ひとまず自分のやりたい研究を探すことと,大学入学に必要な勉強をすることをお勧めします!

そして,大学に入ったら生物物理若手の会にぜひ入ってください.面白い研究に多く出会うことができるはずです!!

謝辞

長岡技術科学大学の藤原郁子准教授には,ポスター作成時や当日に多くのサポートをいただきました.国立遺伝学研究所の前島一博教授にはDNAペーパーモデルについて教えていただきました.名古屋工業大学の神取秀樹教授にはロドプシン提供に快諾いただき,杉本哲平さんには試料調製に助力いただきました.上記の方々に,この場を借りて深く感謝し,御礼申し上げます.

文献
 
© 2023 by THE BIOPHYSICAL SOCIETY OF JAPAN
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