生物物理
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用語解説
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2024 年 64 巻 1 号 p. 42-43

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Multiple Sequence Alignment (MSA)

比較されるアミノ酸や核酸の配列を構成する残基や塩基を個々に対応づけて併置すること,あるいはされたものを,配列アラインメント(Sequence Alignment)という.通常,三配列以上の多重併置を多重配列アラインメント(Multiple Sequence Alignment)と呼ぶ.(5ページ)(富井)

Position-Specific Iterated BLAST (PSI-BLAST)

問い合わせアミノ酸配列の位置特異的行列(Position-Specific Scoring Matrix(PSSM))を用いて,ギャップを許容するBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムで配列データベースを反復して検索する方法.都度の検索結果に応じてPSSMは更新され,指定回数あるいは結果が収斂するまで検索が反復される.(5ページ)(富井)

Bidirectional Encoder Representations from Transformers (BERT)

Googleから発表された,(億を超える数の)パラメータをもつ大規模深層学習モデルを大量のテキストデータで事前学習した,いわゆる大規模言語モデル(Large Language Model(LLM))の一種.本文で触れたMLMを採用し,前後双方の単語(文脈)から予測対象の単語を推定する双方向Transformer.(7ページ)(富井)

Generative Pre-trained Transformer (GPT)

OpenAIから発表されたLLMの一種.BERTとは異なり,前の単語(文脈)から次の単語を推定する単方向Transformer.(7ページ)(富井)

交差エントロピー Cross entropy

「真」(ここでは正解)の確率分布pと予測した確率分布qの間で–∑ipilogqiとして計算される.(8ページ)(富井)

ハイスループットスクリーニング系 High-throughput screening system

検出したい現象に対して,効率的なアッセイ方法を作ることで,大量のサンプルを自動的・高速にアッセイするシステム.本研究では,蛍光プローブにより細胞内の鉄(II)イオンの増減を高速蛍光イメージングシステムを使ってアッセイするシステムを構築した.(12ページ)(平山)

フェロトーシス(鉄依存的細胞死) Ferroptosis

2012年,Stockwellらによって報告された新たなプログラム細胞死(Dixon, S. J. et al. (2012) Cell 149, 1060-1072. DOI: 10.1016/j.cell.2012.03.042).鉄キレート薬により阻害されることから,本細胞死が鉄依存的であると言われる.フェロトーシスの誘導薬としてはエラスチン,RSL3等が報告されている.(15ページ)(平山)

オクタノール/水分配係数(logP) Octanol-water partition coefficient

ある物質がオクタノールと水の混合液に溶けた際,その物質がオクタノール相と水相のどちらにどれだけ存在するかを示す指標であり,一般的に常用対数表記で示される.(22ページ)(森田ら)

リピンスキーの法則 Lipinski’s rule of five

化合物が経口医薬品として適しているかを予測するための経験的かつ古典的な予測指標.分子量,logPや水素結合のドナー・アクセプター数についての基準をもとに適切性を判断する.(22ページ)(森田ら)

DNAナノチャネル DNA nanochannel

DNA分子で構築される筒状のナノ構造体.複数の一本鎖DNAの塩基配列や空間配置を設計することで,ボトムアップ的に構築される.設計性が高く,外部刺激に対する応答性を付加できるため,バイオセンサやドラッグデリバリーシステムへの応用が期待されている.(28ページ)(赤井ら)

コンダクタンス Conductance

電流の流れやすさを示す値であり,直流回路では抵抗の逆数で表される.イオン電流計測では,脂質二分子膜に挿入されたナノチャネルが抵抗として働くため,コンダクタンスを解析することで,ナノチャネルの形状やサイズを解析することができる.(29ページ)(赤井ら)

Hilleの式 Hille equation

イオン電流計測において,円筒状のナノポアの抵抗値を表す理論式.ナノポアの半径,長さおよび電解質溶液の電気伝導率を用いて表されるため,実験的に得られたナノポアのイオン電流からナノポアのサイズを推定する際に用いられる.(29ページ)(赤井ら)

オプシン Opsin

7回膜貫通構造を持った光感受性GPCR.元来は,桿体視細胞ではたらく光受容タンパク質ロドプシンが発色団レチナールを放出したあと生じるアポタンパク質のことを「オプシン」と呼称したが,現在ではロドプシン様光受容タンパク質の総称として用いられる.(32ページ)(塚本)

三量体Gタンパク質を介したシグナル伝達経路 Signaling pathways via trimeric G proteins

三量体Gタンパク質のαサブユニットは,Gsα, Gi/oα, Gqα, G12αに大別され,Gsα, Gi/oα, Gqαは,二次メッセンジャー経路を介してそれぞれ,cAMPの上昇,cAMPの低下,Ca2+の上昇をもたらす.G12αは低分子Gタンパク質などを活性化する.Gβγが駆動する主要な経路としては,K+チャネルのGIRKの活性化や電位依存性Ca2+チャネルの抑制がある.(32ページ)(塚本)

アレスチン Arrestin

GPCRによるシグナル伝達をシャットオフするタンパク質として同定された.後の研究から,アレスチンも独自のシグナル伝達経路を駆動することが明らかにされ,MAPキナーゼ経路の活性化や,遺伝子の転写制御などに関わることが知られている.(32ページ)(塚本)

トランスクリプトーム解析 Transcriptome analysis

遺伝子の転写産物の網羅的な解析.特定の遺伝子をターゲットとせず,多くの遺伝子を計測して法則性などを捉えることができ,データ駆動的なアプローチの一つとして用いられている.近年では1細胞を対象にした計測も実現している.(35ページ)(城口)

主成分分析 Principal component analysis

多変量解析の一つで,多数の変数から相関のない少数で全体のばらつきを最もよく表す主成分と呼ばれる変数を合成する手法.データの次元を削減するために用いられる.(36ページ)(城口)

オルガノイド Organoid

幹細胞や前駆細胞を3次元的に培養することで作製できる細胞塊で,幹細胞や分化した細胞を含み,由来する組織や胚などの機能を部分的にもつ.「ミニ臓器」とも捉えられ,再生医療や薬剤スクリーニングなどへの応用が期待されている.(37ページ)(城口)

Brusselatorモデル Brusselator model

Prigogineらが考案した2種の化学成分からなる自己触媒化学反応モデル.パラメータに応じて振動やTuringパターンを示す.(39ページ)(西出,石原)

 
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