日本生物物理学会中国四国支部は,「中国・四国地区とは島根,鳥取,山口,広島,岡山,愛媛,香川,徳島および高知の9県とその周辺の地域を指す」として指定された地区における一般社団法人日本生物物理学会会員同士の交流を深め,研究教育活動の活性化を目的として2007年(平成19年)6月に発足しました.支部長は,任期2年で,原則として重任を避ける方針です.総会出席者(生物物理学会会員)全員の投票により選出されますが,最近は,総会で互いの顔を見合わせ,拍手でこの人かな―ギョッ,という形での選出が多いと記憶しています.これまでの歴代支部長には,桐野豊,篠原康雄,楯真一,永野真吾,須藤雄気,松木均がおり,私が7代目の支部長です(表1).
中国四国支部支部大会の歴史
支部会 | 年 | 開催地 | 大会長 | 所属 | 支部会長 | 所属 | |
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第1回四国支部会 | 2007年(平成19年) | 6月16日 | 徳島文理大学・香川キャンパス | 桐野豊 | 徳島文理大学香川薬学部 | 桐野豊 | 徳島文理大 |
第1回 | 2008年(平成20年) | 5月10日,11日 | 高知大学・朝倉キャンパス | 桐野豊 | 徳島文理大学 | ||
第2回 | 2010年(平成22年) | 5月8日,9日 | 松山大学・文京キャンパス | 加茂直樹 | 松山大学薬学部 | ||
第3回 | 2011年(平成23年) | 5月14日,15日 | 広島大学・東広島キャンパス | 楯真一 | 広島大学大学院理学研究科 | ||
第4回 | 2012年(平成24年) | 6月2日,3日 | 山口大学・吉田キャンパス | 右田たい子 | 山口大学農学部 | ||
第5回 | 2013年(平成25年) | 5月25日,26日 | ベネッセハウス(香川県) | 成瀬恵治 | 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 | 篠原康雄 | 徳島大 |
第6回 | 2014年(平成26年) | 5月17日,18日 | とりぎん文化会館(鳥取県) | 永野真吾 | 鳥取大学工学部生物応用工学科 | ||
第7回 | 2015年(平成27年) | 5月30日,31日 | 徳島大学常三島キャンパス | 松木均 | 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 | 楯真一 | 広島大 |
第8回 | 2016年(平成28年) | 5月28日,29日 | 高松テルサ(香川県) | 岸本泰司 | 徳島文理大学香川薬学部 | ||
第9回 | 2017年(平成29年) | 5月20日,21日 | 松山大学薬学部 | 奈良敏文 | 松山大学薬学部 | 永野真吾 | 鳥取大 |
第10回 | 2018年(平成30年) | 5月19日,20日 | 高知大学 | 山田和彦 | 高知大学教育研究部 | ||
第11回 | 2019年(令和元年) | 5月11日,12日 | 広島県民文化センター | 八木俊樹 | 県立広島大学生命環境部 | 須藤雄気 | 岡山大 |
中止 | 2020年(令和2年) | 5月23日,24日 | オンライン(山口大学) | 岩楯好昭 | 山口大学理学部 | ||
第12回 | 2021年(令和3年) | 5月22日 | オンライン(山口大学) | 岩楯好昭 | 山口大学理学部 | 松木均 | 徳島大 |
第13回 | 2022年(令和4年) | 5月28日 | オンライン(岡山大学) | 須藤雄気 | 岡山大学学術研院医歯薬学域(薬学系) | ||
第14回 | 2023年(令和5年) | 5月20日,21日 | 鳥取大学・湖山キャンパス | 溝端智宏 | 鳥取大学学術研究院工学系部門 | 冨永貴志 | 徳島文理大学 |
当初の支部会の設置は,年会の開催と強くリンクしていたようで,四国での年会開催の機運に合わせて発足されたものと理解しています.ただし,中国四国地区では,それ以前には1987年度第25回大会,徳島大学医歯学部(徳島)(安芸謙嗣大会長),1976年第15回大会,広島大学医学部(広島)(安永達也大会長)が実施されているようで,大会の規模が大きくなってきたことなどと合わせて支部会の設置がなされたものと推察されます(さらに大きくなるとこれも非合理的か).
中国四国支部会の設置後は2009年度第47回日本生物物理学会年会,アスティ徳島(徳島)(桐野豊大会長)に続き,2018年の第56回大会,岡山大学(岡山)(沈健仁大会長)で開催されています.
支部大会は第1回を四国地区のみの四国支部大会として徳島文理大学・香川キャンパスで開催したのを皮切りに,中国地区を加えた中国四国支部大会(第1回から第14回)が続きました(表1).概ね5月の気候のよい頃で,土曜日,日曜日をまたぐ2日の開催とし,初日の夜は親睦会というノンビリとしたパターンでの開催でしたが,新型コロナ感染症の流行の影響で2020年は開催前中止,2021年,2022年と1日のみのオンラインでの開催となりました.今年(2023年度)は第14回として4年ぶりの対面での支部会となりました.
「スタバはないが,スナバはある」と言われた鳥取県(現在はスタバも「すなば珈琲」もあります)での支部大会開催は,天気にも恵まれ,「砂の器」(古い!)の印象とは全く異なる,特に若い参加者の笑顔が溢れた支部大会となりました.鳥取大学会場は,鳥取砂丘にも白兎伝説の白兎海岸にも近く,新鮮な場所でありました(写真1).
風光明媚な鳥取会場付近の写真
左上:白兎神社,右上:鳥取砂丘,下:因幡の白兎伝説の淤岐ノ島
大会は,大会長溝端知宏(鳥取大学学術研究院工学系部門)と組織委員(佐藤裕介,永野真吾,日野智也,本郷邦広)が中心となって若い多くのスタッフの手で開催されました.
ひさしぶりの対面の支部大会で,当初は参加登録が少なかったため心配しました.中国四国地区は広大(!)で,若手や学生には交通費が大きな負担になります.数回前の支部会から,希望者に対して旅費の援助を行う制度を作っていましたが,実際には希望者が申し出ることはなかったとのことで,今回は旅費援助を廃止し,奨励金という形式での援助を試みました.
支部大会では,英語での口頭発表をしてもらい,審査の上,優秀な発表をした人に贈られる若手発表優秀賞を設けています.今回は,「若手研究奨励金」を発表賞への申し込み者に提供することを決め告知しました.この結果,若い参加者が増え,発表賞へのエントリーは11名になりました.これは例年の倍以上です.この中から最優秀発表賞1名(Kentaro Sakamoto,鳥取大学),優秀発表賞1名(Atsuto Ura,兵庫県立大学),発表奨励賞4名(Chujie Liu,大阪大学;Yurina Araki,大阪公立大学;Hiroto Furukawa,鳥取大学;Mika Omura,大阪公立大学)を選出できました.近畿地区からの参加者も多く,24の演題がありました.奨励金方式は効果的でしたが,資金の面で持続可能性の点では今後の検討が必要です.
演題の多くは構造生物学を中心としていたように思いました(隣県の粒子加速器施設「スプリング8」の影響か?).一方,脳神経系や細胞生物系は若干少数派になりつつあります.私は「ゾウリムシの」内藤豊さんに電気生理学を基本とした細胞生物学の教育を受け,「イカの」,「愛の」松本元さんの研究室から生物物理学会に参加するようになった人間なので,この分野の方にもふるって参加してほしいと思っています.支部会は規模が小さいため,多様な分野の話題が混在し(かなりハード),昔の生物物理学会の雰囲気が思い出されます.
支部では全国からの参加を望んでいます.これまで知ることのできなかった中国四国各地の魅力に触れるよいチャンスです.中国四国地区で質の高い研究を続けている支部会員の研究にも触れていただければ,生物物理学全体を盛り上げることができると思います.
今回は,例年の懇親会は残念ながら開催できませんでしたが,これまで支部会ではこの懇親会がメイン(個人的感想です)でした.来年以降は再開できることを望んでいます.来年は徳島県で開催の予定です.総会の最後には,今後も中国四国支部会として生物物理学会を盛り上げていきましょうということが拍手で決議されました(写真2).
鳥取での支部大会
左上:湖山キャンパス会場,右上:会場の様子,下:集合写真
今後とも中国四国地区の活動にご理解とご協力をいただければと思います.