2024 年 64 巻 5 号 p. 275-276
23年度東北支部長の中林孝和(東北大院薬)です.23年度は,昨年度に引き続き幹事職は田中良和先生(東北大院生命)と吉田一也先生(山形大院理工),会計職は田原進也先生(東北大院薬)にお願いさせて頂き,東北支部会を運営致しました.また,24年度ですが,本来であれば引き継ぐところですが,私の不手際により,そのまま支部長を続けさせて頂いています.できるだけ早く引き継ぎを行います.本支部だよりでは,今年3月に行われた北海道支部・東北支部合同例会を中心に紹介します.
23年度の東北支部例会は,22年度と同様に北海道支部・東北支部合同例会として,2024年3月22日(金)の午後にZoomによるオンラインで行われました.すべて口頭発表になり,16件の講演,当日は約70名の参加者となりました.オンラインでありながら活発な質問があり,盛況であったと思います.昨年度と同様に,数名の先生に講演賞審査員をお願いし,本年度は以下2名の学生の方に講演賞を授与しました(図1).

優秀発表賞受賞者の方々と記念撮影.
【優秀発表賞】
「in vitro実験によるクロモキネシンKidの1分子観察」古崎夏希(東北大理)
「ラマン分光法と機械学習を用いた老化細胞のラベルフリー検出」小玉裕子(東北大薬)
特別講演として,出村 誠先生(北大先端生命)にご依頼し,光受容タンパク質の構造―機能相関に関する最新の成果と今後の展望について講演を行って頂きました.合同例会の講演内容は,昨年度と同様に,タンパク質の構造解析から細胞のイメージング,機械学習を用いたスペクトル解析など生物物理のトピックスを凝縮した内容となり,大変勉強となる会でした.23年度の北海道支部長である小松崎民樹先生(北大電子研)には大変お世話になりました.有難うございました.
この4年間の東北支部の例会は,北海道支部との合同例会としてZoomによるオンライン開催としています.きっかけはコロナ禍であったと思いますが,次年度以降もできればオンラインの合同例会を続けていきたいと思います.東北支部の例会では,発表件数が少ない,東北大の発表が多数を占めるという問題点がありました.その中で北海道支部と合同開催することは,単純に発表件数が増えるだけではなく,研究内容も広がり,上述のように生物物理のトピックスを凝縮した会となっています.北海道または東北に実際に赴いて開催する案もあったのですが,旅費や日数を考えると参加者がどうしても少なくなります.そのため,対面の良さは当然あるのですが,オンラインとし,また参加費も無料にして気軽に参加できるようにしました.気軽な発表という点では,昨年度と同様に発表は日本語可としました.英語化の目標とは異なりますが,英語のハードルが高い学生も発表できるようにしました.また,要旨もA4の1ページから半ページに短縮し,要旨作成の負担軽減も行いました.気軽に発表できる会を心掛け,学部4年生の発表デビューに使えるような例会を目標としました.実際の例会では,学部4年生の発表者が多くみられ,その目標はある程度果たしたと思います.優秀発表賞を受賞した学生さんも1名は学部4年生になります.
支部例会の目的は最新の研究成果を発表し,近隣でのネットワークを築くことかと思います.また,昨年度も書きましたように1),普段中々発表を行う機会が無い学生,研究室でも気軽に発表する機会を与える場でもあるとも思います.しかし実際は,発表件数を増やすのが大変であったり,特定の大学に発表が偏るなど,目的が果たされていない例会になることがあります.また,博士後期課程の学生さんになると,今度は支部例会で発表をしたがりません.「発表は年会や国際学会で行いたい,支部会で発表しても…」という感じです(これは私の研究室のみでしょうか…).
合同支部会とすることで盛り上がったということは,逆に言えば,「合同にしないと盛り上がらない」ということかもしれません.もちろん宣伝活動が必要ですが,こちらも逆に言えば「しっかり宣伝をしないと集まらない」ということになります.支部例会で発表するメリットは何なのか,多くの研究室で発表してもらうにはどうしたらよいのか,をこれからも模索する必要があります.また,学会一般に言えることですが,年々研究者の仕事が増える中,支部長を含め学会の仕事の低減化も考える必要があります.ボランティアであり,また週末の学会の仕事もあります.時代の流れとはあっていないかもしれません.数十年に渡り踏襲されてきた慣習や制度を見直す時期にきているのかもしれません.
支部例会で学生発表をさせることで,学生さんのモチベーションを高めることも,支部例会の重要な目的の一つです.研究室の運営において,学生のモチベーションを向上・維持することは課題の一つですが,私の研究室(東北大学大学院薬学研究科生物構造化学分野)では,学生さんが筆頭著者として論文がアクセプトされた際に,モチベーションの向上・維持や「おめでとう」「お疲れさま」の気持ちを込めて,論文が印刷されたマグカップ(図2)を学生さんに贈ることを行っています(もちろん,自費です).このマグカップを贈ることをTwitterに投稿したところ,いわゆる「バズり」,ネット記事のインタビューまで行うことになりました2).学生さんの評判も良いようです.マグカップ購入のHPは以下3)になりますので,ぜひご検討ください.

学生に贈呈したマグカップの例.
最後に昨年度も書かせてもらいましたが,次世代放射光施設「ナノテラス」の続報を記します(図3).高輝度軟X線を特徴とする放射光施設ナノテラスが今年の4月より稼働しました.東北大青葉山キャンパスの隣にあり,地下鉄で仙台駅から約10分と,おそらく最も(世界の中でも)交通の便が良い放射光施設かと思います.ぜひ使って頂きたいのですが,コアリションメンバーとなると優先的に予約をとることができます.コアリションとは,加入金を支払うことで優先予約時間を確保できる制度であり,東北大の理系部局の多くはコアリションメンバーとなっています.東北大の研究者と共同研究を行うことで,コアリションメンバーとして優先予約ができるかもしれません,御一考頂ければと思います.

ナノテラスの外観と駐車場.今回も中の写真の掲載は見送らせて頂きました.