生物物理
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解説
ゲノム複製と姉妹染色分体間接着の形成機構
村山 泰斗
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2025 年 65 巻 3 号 p. 129-134

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Abstract

複製を経て倍加した染色体はコヒーシンと呼ばれるタンパク質複合体により接着される.この姉妹染色分体間接着は正確な染色体分配を保証し,細胞分裂に不可欠な構造体である.本解説では,進展が著しい生化学的再構成研究を中心に紹介し,コヒーシンによる接着制御の分子機構の現状について述べる.

Translated Abstract

In every round of cell division, two newly duplicated sister chromatids are held together by the ring-shaped cohesin complex to ensure faithful inheritance of chromosomes in dividing cells. The cohesin complex mediates sister chromatid cohesion by topologically entrapping two replicated DNAs within the ring cavity. Recent studies with purified cohesin have begun to reveal the biochemical properties that control chromosome organisation. This review summarises these biochemical studies and discusses how cohesin associates with DNA and establishes sister chromatid cohesion.

1.  はじめに

細胞は分裂の度にゲノムDNAを包含する染色体を複製し,そのすべての染色体セットを次世代の細胞へと受け継ぐ.染色体複製の理解は,特に精製タンパク質を用いた再構成の台頭により,直近十年で飛躍的に進展している1).DNA複製装置の動作機構はもとより,複製に共役したクロマチン制御やDNA損傷修復など染色体複製にまつわる様々な分子機構が日々明らかになりつつある.

これらに加え,複製に密接に紐付き,正確な染色体の分配に必須な構造体として姉妹染色分体間接着が知られる(図1).文字通り複製により生じる2本の染色分体が物理的に接着した状態を指し,コヒーシンと呼ばれるリング状構造のATPase複合体により形成される.この接着は,紡錘体微小管が染色体を細胞両極に牽引する時に張力起点となり,染色体-紡錘体間の双極性結合を担保することによって細胞分裂での正確な染色体分配を保証する.よって接着形成に機能する因子の異常は染色体分配エラーに繋がり,がん細胞で見られる染色体異常や配偶子形成能の低下などと密接に関連する.

図1

姉妹染色分体間接着と染色体分配.

コヒーシンはSMC複合体(Structural Maintenance of Chromosomes)と総称される染色体の構造形成に機能する因子の一つであり,四半世紀以上前に酵母の遺伝学研究から同定された2).その特徴的なリング構造から,コヒーシンはDNA鎖を束ねる分子バンドルとして機能し,接着を形成すると考えられている3).また,Hi-Cなど染色体構造捕獲法を用いた研究から,コヒーシンは接着構造とは独立に,同じ染色体の遠位2点を束ねてクロマチンループを構築し,染色体の高次構造ドメインの形成制御を担うことがわかってきた3).これらの染色体ドメインは発生・分化における遺伝子発現の時空間特異的な制御に密接に関わっている.近年コヒーシンのタンパク質機能解析が進展し,染色体の構造形成に関わる生化学特性が解明されつつある.本稿では,特に接着形成に関わるコヒーシンの機能について,生化学研究を中心に紹介する.

2.  コヒーシンと接着形成

コヒーシンはDNA複製に先立ち,G1期にクロマチンに結合する(図2A).コヒーシンのクロマチンへの結合は,ローダーと呼ばれるScc2-Scc4ヘテロ複合体に依存する.反対に,クロマチンからの解離はPds5-Wapl複合体により制御される.よってG1期では,コヒーシンは動的であり,この二つの因子のバランスによりクロマチンへの結合と解離を繰り返す.S期に入り複製装置が衝突すると,二つの重要な変化がコヒーシンに生じる(図2B).第一に,コヒーシンは複製で生じた2本の染色分体を束ねて接着を形成する.第二に,コヒーシンは複製に共役してアセチル化され,染色体上で安定化することで接着が確立される.最終的に,細胞分裂期に染色体-紡錘体間の双極性結合が確立されると,コヒーシンはセパレースにより切断され,染色体が分配される.

図2

コヒーシンによる接着形成.

3.  トポロジカルDNA結合

分子レベルでは,コヒーシンはリングを開閉させ,リングの中にDNA鎖を取り込むという特殊なDNA結合活性を示す.このトポロジカル結合と呼ばれるDNA結合様式を介し,コヒーシンは複製された2本の姉妹染色分体を束ねるようにして接着を形成すると考えられている(図3).コヒーシンのリング構造はSmc1,Smc3,Scc1の3種のサブユニットで形成されており,サブユニット間の結合を一時的に解離してリング内にDNAを取り込むと想定される(図3A).細胞核内におけるコヒーシン局在の観察結果と一致し,精製タンパク質を用いた再構成実験により,ローダーがコヒーシンのトポロジカルDNA結合を直接促進することが示された4),5).同様の再構成系により,Pds5-WaplがコヒーシンをDNAから解離させることも判明した6).更に光ピンセットを用いた研究から,トポロジカル結合したコヒーシンは20 pNの張力に耐えてDNA結合を維持することが示された7).染色体分配では染色体一本あたり700 pNの張力がかかり,紡錘体微小管が結合するセントロメア近傍には約200分子のコヒーシンが接着を形成すると見積もられている8),9).よって,このコヒーシンの一分子の張力耐性は,トポロジカル結合によって紡錘体の牽引力に耐える接着構造体が形成されるという予想と一致する.

図3

コヒーシンのトポロジカルDNA結合と解離.A.コヒーシンの構造モデル図.B.コヒーシンは,まずScc2-Scc4と複合体を形成し,静電相互作用を介してDNAに初期結合する.この時コヒーシンはリングが折れ曲がってDNAを挟み込むような構造変化を起こす.C.N-gate(Smc3-Scc1相互作用部位)もしくはヒンジ部が一時的に開閉しリング中空にDNAを取り込む.D.その後,Pds5-WaplによりN-gateが開き,DNAから解離する.

ではコヒーシンはどのようにリングを開き,DNAを出し入れするのか.DNAへのトポロジカル結合と解離反応は,生化学的にいくつかの共通点がある.まず,両反応はコヒーシンのSmc1とSmc3に触媒されるATP加水分解活性を必要とする.また,DNA結合と解離はSmc3のATPaseドメインにある保存された二つのリシン残基に依存する6).クライオ電子顕微鏡による構造解析から,これらのリシン残基はコヒーシンがATP結合した時にローダーのScc2とDNAの両方と相互作用することがわかっており,コヒーシンの活性制御中心だと考えられる(図3B10).ローダーのScc2とPds5は構造的に類似しており,どちらもコヒーシンのScc1に結合するが,その結合領域は重複しており,両方が同時には結合できない.

実験的に開くことが明らかになっているのはSmc3-Scc1の結合部位(N-gate)である.コヒーシンの改変タンパク質を使った実験から,ATP存在下において,Pds5-WaplによりSmc3とScc1のN末端部の結合が外れることが示された6).N-gate部位はコヒーシンのATP結合により分子間距離が変動することから,Pds5-Waplはコヒーシンの構造変化と協働してN-gateを開くと予想される(図3C, D6),10).コヒーシンのN-gateに相当する箇所は,コンデンシンやSmc5/6複合体においても開くことが確認されており,N-gateはSMC複合体に共通したリング開放点だと言える11),12).興味深いことに,再構成反応では,Pds5-Waplはコヒーシンの解離だけでなく,反応条件によってはトポロジカル結合も促進する.このことは,コヒーシンは原理的にN-gateを通じてDNAを出し入れ可能であることを意味する.

一方で,タンパク質部位特異的架橋を利用した研究から,コヒーシンはN-gateに加えて,ヒンジ部が開くことが示唆されている.リンカーペプチドでSmc1-Scc1とSmc3-Scc1を融合し,ヒンジ部のみが開くことが可能なコヒーシンを作製した場合,この改変コヒーシンでもトポロジカル結合が起こる(図3B, C13).何故二つの部位からDNAの取り込みが起こるのかはわかっていないが,結合する染色体領域の違いや染色体構造によってそれぞれのゲートを使い分けると考えられる.

4.  接着の形成とDNA複製

コヒーシンが2本の染色分体を束ね接着させるには,原理的に二つの経路がありうる(図4A).第一に,コヒーシンがDNA複製に先んじてDNAにトポロジカル結合し,その状態を維持して複製が完了する場合である(第一経路).例えば,複製装置がコヒーシンリングの中を通り抜けることができれば,自然と2本の新生DNA鎖が束ねられる(図4B).もしくは,複製装置の接近に伴ってコヒーシンが一旦DNAから外れ,複製装置の後ろ側に移行してから2本の新生DNA鎖をリング内に捕縛する.この場合は,複製装置の後ろで2本の新生DNA鎖を順次また同時にトポロジカル結合することになる(図4A,第二経路).実際に,ローダー(Scc2)の活性を細胞周期特異的に人為制御した研究から,接着形成にはG1期にクロマチン結合するコヒーシンと複製時にローディングされるコヒーシンの両方が必要なことが示唆されている14),15)

図4

DNA複製と接着形成.A.真核生物のDNA複製とコヒーシンの接着形成モデル.B.複製装置通過モデル(第一経路の一つ).コヒーシンは複製前にDNAにトポロジカル結合し,その後複製装置をリング内に通過させることで接着が形成される.C.複製終結モデル.トポロジカル結合した状態で複製が完了することで接着が形成される(第一経路の別モデル).D.複製装置の背後で接着を形成するモデル(第二経路).コヒーシンは2本の複製されたDNAと直接トポロジカル結合して接着を形成する.

真核生物の染色体複製は,ゲノムDNAの複数箇所から開始する(図4A).G1期において,複製開始点ではOrc複合体によって複製装置の中核であるMcm2-7ヘリカーゼ複合体が二つ装着される.S期に移行すると種々のキナーゼや複製開始因子の働きによりMcm2-7にCdc45とGINS複合体が結合し,活性化型のCMGヘリカーゼ複合体が形成される.それぞれのCMG複合体は単鎖DNAに結合して3’-5’方向に進行しDNAを開裂する.その後CMGの後方にDNAポリメラーゼが装着され複製装置が完成する.二つの複製装置は,連続的なリーディング鎖合成と不連続なラギング鎖合成を伴いながら双方向に進行し,ゲノムDNAを複製していく.最終的に,隣り合った開始点から進行してくる複製装置が交わり,DNA複製が完了する.

一連の複製過程は,20種以上の精製した複製因子を反応させることで再構成することが可能である16).この精製タンパク質再構成系を用い,DNA複製に対するコヒーシンの応答が試験管内で検証された17).具体的には第一経路を想定し,コヒーシンをトポロジカル結合させてから,複製を行っている.この反応において,コヒーシンは複製が完了したDNAとトポロジカル結合していた.一方で,トポロジカル結合させなかった場合は,コヒーシンは複製されたDNAとは結合していなかった.これらの結果は,コヒーシンはDNAをリング内に囲い込んだ状態になると,DNA複製が進行してもDNAから外れず,複製の完了に伴ってそのまま2本の姉妹DNAを束ねて接着を形成することを示唆する.

コヒーシンは実際に複製装置をリング内に通して接着を形成するのだろうか(図4B).コヒーシンのリング径は35 nmでありCMG複合体が25 nmであることから,数値からは通過は可能である18),19).興味深いことに,ツメガエル卵抽出液を使った一分子研究から,コヒーシンがDNA上に存在した場合,一定の確率でDNA複製がコヒーシンを越えて進行することが報告されている20).しかし,別の研究では,トポロジカル結合したコヒーシンは,DNA上の障害を乗り越えて通過する際に大きさにかなりの制限があり,20 nm以下のDNA結合タンパク質であっても容易に通過できない21).近年の構造解析から,コヒーシンは柔軟かつ大規模に構造を変化させ,いわゆる開いたリングの形状から,SMCサブユニットの腕部が折れ曲がったコンパクトな形状まで多様な形態を取りうることがわかってきた10),22).この構造柔軟性が,DNA上にある障害物の乗り越えに制限をかけると考えられる.複製装置に結合する数種のタンパク質はコヒーシンに直接結合し,細胞において接着形成に必要である.これらはコヒーシンのリング円周の複数箇所に渡って結合することから,リング形状を調整して複製装置の通過を促進するのかもしれない.

一方で,複製装置の通過とは別の方法で接着が形成される可能性が,同様にツメガエル卵抽出液を使った研究から報告された23).コヒーシンが二つの複製起点の間に存在すると,まずコヒーシンは片方の起点から来る複製装置に押され,次に反対方向から進行する別の複製装置に挟まれる.そして複製の終結点にコヒーシンが留まり,DNA複製が完了する様子が示された.これは第一経路を説明する別の分子機構であり,コヒーシンがトポロジカル結合していても,複製装置はコヒーシンの中を通りぬけることなく複製が完了し,接着を形成することができる(図4C).これらの生化学研究は,コヒーシンは複製に先んじてDNAにトポロジカル結合した場合は,DNAから外れることなく複製の完了を許容し,接着を形成できることを示している.

コヒーシンは第二経路で想定されるように2本のDNAを連続的にトポロジカルに捕縛する活性も持つ15).2本目のDNAとの結合は,ATPやローダー,そしてSmc3の保存されたリシン残基を必要とするため,一本目のDNAとトポロジカル結合するのと同様の機構で行われると考えられる.興味深いことに,2本目のDNAとの結合は,2本目のDNAが単鎖DNAである時に(二重鎖DNAに比べ)より効率的に起こる.この生化学的特性は,複製装置のDNA合成様式を考慮すると,接着形成に有効に機能しうる(図4D).複製装置の後方では,リーディング鎖が連続的に合成される,他方,反対のラギング鎖合成は不連続であり,一時的に単鎖DNA領域が形成される.よって,コヒーシンはリーディング鎖(二重鎖)からラギング鎖(単鎖)へと連続的にトポロジカル結合することで2本の姉妹DNAを接着することができる.第2経路では複製装置の後方にコヒーシンがリクルートされる必要がある.この分子機構の全容は明らかではないが,促進する因子の一つはDNAポリメラーゼに結合するPCNAである24).コヒーシン活性化因子のローダーは,PCNA結合タンパク質に保存されたPIPボックスモチーフを持ち,これを介してPCNAに結合すること,またこのモチーフの変異により,細胞内で接着形成率が低下することが報告されている.

5.  接着の確立とコヒーシンのアセチル化

2本の染色分体を束ねることに加え,接着が染色体分配まで安定に維持されるためには,Waplによってコヒーシンがクロマチンから解離することを抑制し,安定化する必要がある.この安定化に必要なのがEco1によるコヒーシンのアセチル化である.Eco1はS期に特異的に活性化し,コヒーシンを複数箇所アセチル化する.その中でも特に重要なのがSmc3に存在する二つの保存されたリシン残基である.このアセチル化の役割の一つは,コヒーシンのDNA結合活性を制御することである.試験管内再構成において,Smc3のアセチル化を模倣したコヒーシンは,Pds5-WaplによってDNAから解離する反応が減弱していた6).同時に,この変異コヒーシンはローダーによるトポロジカル結合の促進とATPaseの活性化が失われていた.すなわち,コヒーシンはアセチル化によってリングの開閉ができなくなり,言わば鍵をかけた状態になることでクロマチンからの解離が抑制され,接着を安定化すると考えられる(図5).

図5

コヒーシンのアセチル化と接着の安定化.アセチル化はコヒーシンのDNA解離反応を抑制することで接着を安定化させる.このアセチル化はEco1により触媒され,複製装置の後方で起こるDNA合成の中間体やタンパク因子により特異的に促進される.

アセチル化がコヒーシンリングの開閉を抑制するのであれば,Eco1は2本の染色分体がリング内に捕縛された後にコヒーシンをアセチル化する必要がある.Eco1のタンパク質量はプロテアソームによるタンパク質分解によりS期に存在するように制御されている.しかし,Eco1を過剰発現し,S期以外でも存在するようにしても,コヒーシンのアセチル化は影響を受けず,通常と同様にDNA複製の時にのみ起こることから,タンパク質量の制御以外の機構によってアセチル化の細胞周期特異性が制御されていることになる.Eco1はDNAポリメラーゼのクランプであるPCNAに結合することから,アセチル化は複製装置の後ろ側,DNA合成と関連することが示唆されていたが,具体的な分子機構は不明であった.近年,このアセチル化の制御機構が,再構成実験によりエレガントに示された(図525).まず,ローダーとPds5が存在する状態で,DNAポリメラーゼとPCNAによってラギング鎖合成を再構成した時にのみ,コヒーシンのアセチル化が効率的に起こることが示された.ラギング鎖合成の終結段階でできるDNAニックやフラップ構造がある時にのみアセチル化が起こり,リガーゼによってDNAが連結されると,PCNAがDNAに結合していても,アセチル化はもはや起こらない.すなわち,コヒーシンのアセチル化は,ラギング鎖合成の終結段階でできる特殊なDNA構造にPCNAが結合し,かつローダーとPds5が存在するという特異的な状況においてのみ効率的に起こる生化学反応であることを意味する.

また,特に脊椎動物では,コヒーシンのアセチル化だけではWaplに拮抗するには不十分で,接着を安定化するために更にSororinが必要である26).SororinはPds5を介してアセチル化したコヒーシンと結合し,WaplとPds5との結合を一部阻害することによってコヒーシンの解離を抑制する.Sororinは接着を形成したコヒーシンとのみ特異的に共局在するが,この選択特異性を決める分子基盤は不明である.アセチル化されたコヒーシンはATPaseドメインの会合状態が変化するという報告があり,接着形成したコヒーシンの分子構造も関与するかもしれない27)

6.  コヒーシンの解離と染色体分配

細胞が分裂期に入ると,コヒーシンは二つの経路によってクロマチンから解離する.分裂前期では,Pds5-Waplが再び活性化し,染色体腕部で接着を形成したコヒーシンを解離する.これはコヒーシンや関連因子が高度にリン酸化されることに起因し,特にSororinは種々の分裂期キナーゼにリン酸化されてPds5との結合が減弱し,Waplが再びPds5と結合する.一方,紡錘体微小管が結合するセントロメアの周辺領域ではコヒーシンはシュゴシンの働きにより解離せず,接着を維持し続ける.シュゴシンはセントロメア領域に局在し,脱リン酸化酵素であるPP2Aと複合体を形成して,周辺に存在するタンパク質を脱リン酸化する28).これにより,コヒーシンとSororinが低リン酸化状態に保たれ,Pds5-Waplによる解離に拮抗して接着が維持される.またシュゴシンはコヒーシンのScc3に直接結合し,Waplとコヒーシンの結合を直接阻害する29).この前期経路は脊椎動物で顕著であり,酵母では主にセパレースに依存する後期経路でコヒーシンが除かれる.分裂後期になり,染色体-紡錘体の結合が確立されるとセパレースによりScc1サブユニットの中央部が切断されてコヒーシンが解離し,染色体が分配される.セパレースはセキュリンと結合することで不活性状態であるが,染色体分配の直前にプロテアソームによりセキュリンが分解されて活性化する.染色体から解離したコヒーシンは最終的にHos1/HDAC8により脱アセチル化され,次の細胞周期で再び接着形成に利用される.

7.  終わりに

本稿では,主に接着形成に関連するコヒーシンの生化学特性について概説した.接着に関連する研究に加え,現在,コヒーシンがATP駆動のモーター活性を介して能動的にDNAループを形成することが話題になっている.このループ押し出し活性は,コヒーシンがクロマチンループを形成する主たる活性として現在広く受け入れられている30).一方で,本稿で紹介したように,コヒーシンは2本の独立したDNA鎖を束ねる活性も持っており,上記のループ押し出しとは異なる分子機構で,ループは形成されうる.

コヒーシンは2000年代初頭に電子顕微鏡によって,その大まかなリング構造が示されて以来,DNAを束ねるバンドルとして接着を形成することが予測されていた.その後,細胞生物・分子遺伝学を中心とする研究で接着形成の細胞内経路が明らかとなっていった.精製したコヒーシンを対象とした再構成研究の進展により,接着形成に関連する生化学特性と分子機構が徐々に解明されつつある.

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Biographies

村山泰斗(むらやま やすと)

国立遺伝学研究所遺伝メカニズム研究系准教授

 
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