2025 年 65 巻 4 号 p. 213-216
STINGは,自然免疫応答などに重要だが,シグナル伝達機構は不明であった.我々は,1分子・超解像顕微鏡観察法を用い,この問題に挑んだ.STINGは,刺激後,トランスゴルジネットワークに移行し大クラスターを形成し,下流のTBK1を活性化したが,それにはパルミトイル化とラフトへの局在が必須であることを見出した.

STING(Stimulator of interferon genes)は小胞体に局在する4回膜貫通タンパク質である1).2本鎖DNAウイルスなどの感染により宿主細胞の細胞質ゾルに出現したDNAは,cyclic GMP-AMP synthase(cGAS)2)に結合・活性化し,次いで活性化したcGASがcGAMP(cyclic GMP-AMP)3)を産生する.cGAMPは細胞質ゾルを伝播して,STINGに直接結合する.cGAMPに結合したSTINGは,キナーゼTBK1・転写因子IRF3を活性化してI型インターフェロンの発現を誘導し,抗ウイルス応答を惹起する.STINGは同時にNF-κB経路も活性化し,炎症応答を惹起する.近年になり,cGASが細胞質ゾル中に漏出したゲノムDNAおよびミトコンドリアDNAなどの自己DNAにも応答してSTING経路を活性化し,そのことが多種多様な自己炎症性疾患や神経変性疾患(パーキンソン病,多発性硬化症,筋萎縮性側索硬化症)の原因になっていることが示され,新規創薬標的分子として大きな注目を集めている4).
興味深いことに,cGAMP刺激後STINGは,そのオルガネラ局在性を小胞体から核近縁部へと大きく変化させることが報告されている5).田口のグループはSTINGの細胞内局在変化とTBK1のリン酸化を同時にモニターする細胞アッセイ系を考案し,STINGの活性化は,cGAMPを受容する小胞体でなく,ゴルジ体の中の特殊なコンパートメントであるtrans-Golgi network(TGN)で起きていること,STINGのパルミトイル修飾がTBK1の活性化に必要であること,などを明らかにしてきた6),7).これらの結果は,パルミトイル修飾を介してSTINGの動態がゴルジ体で変化しTBK1の活性化を可能にしていることを示唆している.
細胞膜においてパルミトイル修飾タンパク質は,コレステロールやスフィンゴミエリンなどの膜脂質とのインタラクションを介してクラスター化して下流分子の活性化を行うことが提唱されている.同様のメカニズムでSTINGが活性化していることを考え,STINGのTGNでのクラスター化を証明することに挑んだ.そのため,不死化したSTINGノックアウトマウス由来胎児繊維芽細胞(MEF)中にmEos4bを融合したSTINGを発現させて,ライブセルで超解像PALM観察した(図1).刺激前には小胞体上に局在していたが,アゴニストDMXAAで刺激後30分以上経過すると,ゴルジ体上でクラスター形成することを見出した.また,クラスターの定量化のため,カーネル密度推定法とSR-Tesseler法8)によりPALM画像中のクラスターの輪郭を特定したところ,両手法で同様の輪郭が特定できた.そこで,クラスター内のSTING分子数の定量を,mEos4bのPALM観察下における明滅回数の計測から試みた9).まず,精製mEos4bをガラス上でポリビニルアルコール中に固定し,1分子あたりの明滅回数を算出した.次に,細胞中のSTINGクラスター内のmEos4bの明滅回数を算出し,1分子あたりの明滅回数で割り,クラスター内分子数を概算した9).アゴニスト刺激60分後には20分子以上,120分後には60分子以上のSTINGがクラスター内に集積することが明らかになった10).通常の1分子蛍光観察であれば,8量体程度までは定量できるが,カメラのダイナミックレンジを超えるので,分子数が10以上からなるクラスター内分子数の定量は,上記手法が適している.以下,文献10の知見を中心に記述する.

生細胞のゴルジ体膜上のSTING会合体の超解像顕微鏡観察とクラスター内分子数定量の概略図.
STINGが細胞内のゴルジ体上のどこで大きなクラスターを形成しているかを調べるために,TGN局在タンパク質TGN38やcis-Golgi network(CGN)局在タンパク質GM130をdSTORM観察しつつ,STINGクラスターをPALM観察した.結果,刺激10分後にはSTINGはCGNに局在化し,クラスター内分子数は平均10分子以下と少ないことが判明した.一方,刺激30-60分後には,STINGはTGN内に局在し,刺激後120-360分後には,リサイクリングエンドソーム局在タンパク質トランスフェリン受容体やRab11と強く共局在することが判明した.よって,STINGはTGNでクラスターを形成し,そのクラスター状態はリサイクリングエンドソームでも持続していることが明らかになった.
次にSTINGのクラスター形成機構の解明を試みた.著者の田口らは,以前,STINGのパルミトイル修飾がSTINGクラスター形成を促進し,下流信号分子のTBK1やIRF3などの活性化を誘起することを発見した6),7).これを定量的に証明するために,パルミトイル修飾の阻害剤処理を行うと,STINGのクラスター内の分子数の平均値は,半分以下にまで低下した.さらに,STINGのパルミトイル修飾欠損C88/91S変異体が形成するクラスター内分子数もwild-type STINGの半分以下であった.これらの結果は,STINGのパルミトイル修飾がクラスター形成に必須であることを示している.
パルミトイル修飾でSTINGクラスター形成が促進されたことから,クラスターは脂質ラフト相互作用で安定化されているという仮説を立てた.これを検証するため,細胞をD-Ceramide-C6という短鎖スフィンゴミエリンを生成する分子で処理し,ゴルジ体膜の流動性を高めたところ,STING下流のシグナル伝達は抑制され,STINGクラスター内分子数も半分以下になった.一方,短鎖スフィンゴミエリンを生成しないL-Ceramide-C6で細胞を処理しても,STINGクラスター内分子数は変化しなかった.また,コレステロールを小胞体からTGNへ輸送するoxysterol-binding protein(OSBP)を阻害する25-hydroxycholesterol(25-HC)やplant-derived steroid saponin(OSW-1)で細胞を処理すると,STING,TBK1,IRF3のリン酸化が抑制され,クラスター内分子数も半減した.以上,TGNに存在するコレステロールとスフィンゴミエリンがSTINGのクラスター化および活性化に必要であることが示唆された.
興味深いことに,細胞質ゾル側脂質層のコレステロールを可視化するプローブiD4を用いて観察すると,STING刺激前はiD4はゴルジ体に局在しないが,STINGがTGNに到達するとiD4がTGNに集積するようになった.また,この集積はSTINGのパルミトイル修飾を阻害すると抑制された.この結果は,STINGのパルミトイル修飾がTGNにおける脂質ラフトの形成に必要であることを示唆している.形成された脂質ラフト領域でさらにSTINGがクラスター化するという正のフィードバック機構が働いている可能性がある.
COPA病は遺伝性自己免疫・自己炎症性疾患で,関節炎や間質性肺炎を特徴とする常染色体顕性の難治性疾患である.ゴルジ体-小胞体間の膜輸送を担うCOP-I複合体の構成要素の一つであるα-COPにK230N,R233H,E241K,D243Gのいずれかの点変異が入ることで発症することが明らかになっている.これら病気型α-COPの存在下では,cGAMP非依存的にSTINGの小胞体局在が失われ,その結果,TGNに到達したSTINGによりTBK1が恒常的に活性化してしまうことが示されている7).
そこで4種類の病気型α-COPの存在下で観察を行ったところ,STINGは12-19分子から構成されるクラスターを形成していることが明らかになった.この数はcGAMP刺激して形成される野生型STINGのクラスター内分子数と同程度であった.また,このクラスター内分子数は,cGAS をノックアウトした細胞でも変化しなかった.以上,cGAS/cGAMPはSTINGのクラスター化・活性化には本質的に必要ないこと,一方,STINGのTGNへの到達がSTINGの活性化に十分であることが示唆された.
STINGは,TBK1をリクルートし,活性状態を保つ足場タンパク質とされていたが,それを直接検証するために,TBK1の1分子観察とSTINGのPALM観察を同時に行った(図2a-c).結果,アゴニスト刺激60分後には,TBK1は150ミリ秒という期間,TGN上のSTINGクラスターへリクルートされていた.一方,STINGのパルミトイル修飾阻害後やTBK1の活性阻害後には,それぞれ74ミリ秒,92ミリ秒間,STINGクラスターにリクルートされた.また,TBK1がリクルートされた周辺のSTINGの密度も,それらの阻害で低くなり,リクルート頻度も激減した.これらの結果からクラスター内のSTING分子数が大きくなって初めて,TBK1がリクルートされることが明らかになった.

アゴニスト刺激60分後のSTINGクラスター(緑,PALM像)とTBK1の1分子(マゼンタ)の同時観察像.(a)広域像,(b)四角で記した領域の拡大画像のシーケンス.右上数字は時間(秒).(c)STINGクラスターのPALM画像とTBK1の軌跡の重ね合わせ.
STINGの細胞内局在変化と下流シグナル活性化との関連を探る中で,STINGのパルミトイル修飾が活性化に必要であること6),7),さらに1分子観察を行うことでSTINGのパルミトイル化がSTINGのクラスター化に必要であることを見出した10).さらに脂質可視化プローブを用いることで,STINGパルミトイル修飾依存的にコレステロールが濃縮された脂質ドメインが形成されること,そのドメインにTBK1がリクルートされることを見出した(図3).STINGによるTBK1/IRF3の活性化のメカニズムは長らく謎であった.今回,1分子観察を行うことで,STINGがTBK1/IRF3の活性化の足場タンパク質であるということを証明できた(図3).

TGNにおけるコレステロールとパルミトイル修飾に依存したSTINGのクラスター形成を示す概略図.
近年,STINGの異常な活性化が多様な自己炎症性疾患,神経変性疾患の原因になっていることが明らかになってきている4).STINGのパルミトイル修飾阻害剤(パルミトイル転移酵素阻害剤およびSTINGのCys88/91に選択的に共有結合する化合物)や,ゴルジ体コレステロールレベルを制御するOSBPタンパク質の阻害剤などの開発を通じて,STING炎症に依存する多様な疾患の治療薬の創出が期待される.
また,STINGクラスターの超解像顕微鏡観察をさらに高速化したり,解析法を開発し,リアルタイムで3次元超解像動画観察できれば,より正確に事象をとらえることができる.今後,このような観察・解析法の開発を進めていきたい.
田口友彦(たぐち ともひこ)
東北大学大学院生命科学研究科教授
鈴木健一(すずき けんいち)
岐阜大学糖鎖生命コア研究所教授/国立がん研究センター研究所先端バイオイメージング分野分野長