生物物理
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若手の会だより
若手の会だより
~65年目の若手の会,転換点にて~
藤井 真子
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2025 年 65 巻 5 号 p. 287-288

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ワタクシ,若手の会の裏方です

生体膜を人工的に模倣したバイオチップの開発を行っております,藤井真子と申します.神戸の地で蛍光顕微鏡を相方に,脂質膜の自己組織化現象を理解し分子計測ツールに応用するべく,博士課程の日々を打ち興じております.

私はたまたま飛び込んだ夏の学校(以下,夏学)を通して,若手の会というコミュニティと出会いました.そして,研究に関わる議論の場としてはもちろんのこと,運営という裏方としても若手の会と関わるご縁がありました.夏学について詳しく知りたい方はぜひ過去の開催報告をご覧いただき1),本稿では,どのようにして私が若手の会と出会ったか,また「今まさに運営という舞台裏から見た若手の会」をテーマに,感じた若手の会が直面している課題を共有いたします.

ラボの先輩と推し絵師がつないだ「若手の会」との出会い

当時学部4年生の私は,生物物理若手の会の運営に携わっていた所属ラボの先輩から若手の会の存在を熱く教えていただき,大学を超えてつながれる研究コミュニティを知りました.しかし,若手とはなんぞやと,学生主体の研究会のイメージが湧かず,参加するか決めあぐねていました.そんな中,大好きなイラストレーターのSNS投稿を見ていると,若手の会主催の研究会メインビジュアルを手掛けているではありませんか!「推しが関わっている研究会だなんて参加するしかない」という気持ちは一気に私の不安を吹き飛ばしたのです.そんなこんなで,先輩からの口コミと1枚の宣伝ポスターが後押しし,若手の会コミュニティと私の出会いに繋がったというわけです.

若手の会で見つけた「研究の推し」

“なぜ夏学に来るのか.そこに夏学があるからだ.”

―とある夏の学校参加者

これは初めて参加した夏学で,私の胸に飛び込んできた強烈なフレーズです.実際,この言葉からも伝わるような,参加者たちの熱量に私は圧倒されました.講演では自分が知らなかったような研究分野や考えもしなかった研究課題があるのだと驚き,参加者交流やポスター交流では,同世代の大学生・大学院生がたくさんの研究成果を出していることに刺激を受けました.参加者同士の研究交流や,講演に関する感想の共有を通じて広く深い話ができたおかげで,学術分野での「推し研究」を見つけることができました.結果,夏学での出会いは,研究会の会期後にも自分自身の研究ライフを彩ってくれたと思っています.実際,私は自身の研究対象“生体膜”を共通因数に研究を深く語れる仲間が欲しいと思い,生物物理若手の会での交流をきっかけに新たなコミュニティも立ち上げました.(ご興味のある方は筆者のメールまでご連絡ください!)同胞を集めた研究会を開いてみたいけれど何から始めて良いかわからない,といった若手研究者にとっても,こういった若手の会運営に参加することは有益になるはずです.

この経験から,こういった幅広い分野の研究者が一堂に会する研究会に参加するメリットの1つは,自分自身の研究の視野を広げられることだと考えています.参加者の研究分野が多岐にわたるために,同じ講演に対して抱く疑問の視点も異なります.親睦を深め批評し合い,見聞を広める絶好の機会だと思うのです.ぜひ,若手の会に興味を持った大学生・大学院生の読者の皆さま,堅苦しいことは深く考えずひとまず参加し,夏学で一緒に語りあいませんか?きっと,あなたなりの「推し研究」が見つかることでしょう!

「若手の会」の急速な規模拡大!

さて,私が若手の会と出会うまでの体験談はこのくらいにし,ここからは若手の会運営として携わってきた経験についてお話させていただきます.

1) コロナ禍を超えて大きくなった夏学運営

端的に言って,スタッフの後継者不足問題は生物物理誌「若手の声」「若手の会だより」過去コーナーでも取り上げられる通り,多くの若手の会が抱えています.生物物理若手の会夏の学校は,コロナ禍のオンライン開催を経てここ数年で急激に参加者規模が拡大してきました(図1).

図1

2007-2025年での夏学参加者及びスタッフ人数.

1960年の若手の会発足以降,夏学の運営は毎年,各地方支部の持ち回りによって行われてきました.コロナ禍前の参加者はおおよそ80人でしたが,2022年以降は200名以上が続いています.運営として盛会は喜ばしい一方,より顕在化したのが「運営スタッフの絶対数が足りない」という問題です.これは,運営が全国支部での持ち回りスタイルだったことに起因していました.この現状を打破するため,運営の中心的メンバーらの議論の結果,支部持ち回りを撤廃し,全国から運営スタッフを募集することにしました.その結果,第65回夏の学校では全国からの有志スタッフ募集が実現いたしました.以前までも運営スタッフ不足を背景に複数支部での共催は行われていましたが,それが全国に拡大したという形です.関わる人数が増えると情報連絡も複雑化しますが,コロナ禍をきっかけに普及したオンラインコミュニケーションツール(SlackやDiscord)が,スケーラブルな運営体制に貢献した側面もありそうです.

2) 運営引き継ぎの効率化

過去60年近い過去の夏学運営では,(年によっては5人にも満たない)限られた支部スタッフが様々な業務を掛け持ちしていたと伺っています.運営で得られたノウハウは翌年の運営スタッフに引き継がれてきましたが,(先輩方のお話を伺ったり,引き継ぎ資料を拝読する中で)1年ごとにスタッフの多くが入れ替わることで生まれる苦労も数多くあったようです.2025年は,約50人の有志スタッフが集まったことに加え,前年の運営からの丁寧かつ円滑な引き継ぎも功を奏し,円滑な運営に繋がりました.これは大きな転換点だったと思います.つまり,夏学運営のノウハウをより効率的に蓄積するシステム構築が進んでいます.一例を挙げれば,分業による運営業務の細分化によって集められた開催地候補や年間運営スケジュール,コミュニケーションプラットフォームDiscordの導入と必要十分な引き継ぎ資料,支部運営や若手の会事務局と連携した告知体制などが挙げられます.一方で,私はこのようにシステム改革の過渡期にある若手の会運営の中で次のような課題を感じました.

拡大した若手の会の新たな課題

全国からの運営有志に業務を細分化することによって運営体制が頑健になりつつありますが,若手自身からの積極的な,時にはご支援いただく学会の皆さまからの熱い期待を背景に,運営準備にかかる手続きが膨れ上がりつつある状況は否めません.結果として人員不足に陥り,夏学運営の中心メンバーが支部や事務局の運営を兼任している実情があり,私はこれを何とかせねばならないという一抹の危機感を覚えています.これは,スタッフの絶対数増加に対して,若手の会運営の準備量が増加しており,夏学以外の分業に関しては今現在まさに体制をアップデートする過渡期にあるがゆえでしょう.本課題は,これから拡大していく夏学スタッフ経験者のプールが,数年後の事務局・支部運営を支える人材になりいずれ解決されると信じています.ぜひとも,夏学運営や支部活動・事務局運営にご興味のある方は,ご連絡ください.夏学運営スタッフは,8-9月ごろに全国募集を行う他,支部運営に関わる支部員への加入や事務局運営に関わるスタッフは通年でお待ちしております.

最後に,生物物理若手の会運営に携わる若手研究者の皆々さまをはじめ,平素よりご支援いただいている皆さまにこの場をお借りして御礼申し上げます.今後も,若手研究者が広く深くつながることができる場として夏の学校運営を進めてまいります.また,若手の会の支部運営については,対面開催での支部セミナーや懇親会を通して支部内の交流を活性化してゆきます.

これまで65年にわたる長い歴史を持つ生物物理若手の会は,全国展開された運営スタッフの募集や,円滑な引き継ぎがしやすい夏学運営体制の構築によってここ数年で大きく変化しています.今こそ若手の会のあり方を考えるターニングポイントです.

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