生物物理
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若手の会だより
若手の会だより
~若手の会との出会いから1年~
山田 哲平
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2025 年 65 巻 6 号 p. 342-343

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 はじめに

2024年10月,生物物理若手の会史上初となる中国四国支部が発足しました.私自身は,その1か月前に開催された第64回生物物理若手の会夏の学校(以下,夏学)で若手の会の活動に初めて参加しました.その直後に,中国四国支部の支部長を務めることとなり,1年後の現在,こうして若手の会だよりを執筆しています.この1年の間に,中国四国支部に加えて,研究対象である生体膜について語り合う場としての「膜コミュニティ」の立ち上げにも関わる機会があり,多くの出会いに恵まれました.本稿では,若手の会との出会いからのこの1年間を振り返り,夏学に参加した経緯や感想,中国四国支部および膜コミュニティでの活動について紹介します.

 夏学への初参加

夏学の存在は修士課程の頃から知っていましたが,その時は特に参加を考えてはいませんでした.しかし,博士課程に進学した頃にきっかけとなる出来事がありました.それは,親しくさせていただいていたポスドクのお二人が研究室を去ったことです.それまでは研究や将来について気軽に語り合える相手に恵まれていましたが(一般的に見たら十分孤独なのですが),一度に失ってしまい,博士課程特有の孤独を強く感じるようになりました.さらに,博士課程進学後に新しい研究を始め,ちょうど面白い結果が得られ始めた時期でもあったため,ラフに研究の話をできる相手がいないことは大きなストレスでした.こうした状況から,仲間を求めて夏学に参加することにしました.

夏学では多くの方と研究談義をしましたが,最も印象に残っているのは,同部屋の方が紹介していた「糸の交差のパターンから編めるかどうかを判定する」という研究のお話です.生物とは直接関係がないものの,その方は純粋な興味からサイドワークとしてその研究に取り組んでおり,それを生物物理の夏学で発表する姿を見て,「研究ってこんなにも自由で良いんだ」と感じたのを覚えています.また,普段の学会ではなかなか積極的に聞きにいくことのないこのような異分野の研究の話を(半ば強制的に)聞けるのは,夏学をはじめとした若手の会の活動の魅力の1つであると感じています.

 夏学が生んだ中国四国支部

中国四国支部は,第64回夏学をきっかけに発足しました.夏学初日の各地方支部紹介の場で,当時の若手の会会長であり,同じく岡山大学に所属している高橋大地さんが,中国四国支部の立ち上げを呼びかけていました.研究仲間を求めて夏学に参加していた私にとって,支部の発足はまさに願ってもない話であり,すぐに参加を決めました.その約1か月後の2024年10月に立ち上げ会議が開かれ,私を支部長として5人のメンバーで正式に発足することとなりました.

 中国四国支部の活動

中国四国支部には現在,助教・ポスドク5名,博士課程9名,修士課程2名,学部生1名の計17名が所属しています.ポスドク以上のメンバーが比較的多く,なかには博士号取得後に一度企業を経てアカデミアに戻ってこられた方もおり,そのような進路選択のお話を伺えるのは大変参考になります.また,研究分野としてはいわゆる生物物理ど真ん中の研究をしているメンバーは意外と少なく,薬学系出身者が最も多い状況です.

現在の主な活動はオンラインでの月例会で(図1),各メンバーが自身の研究を紹介しています.毎回,質問が多く寄せられて時間が押してしまうこともしばしばです.さらに,支部ならではの活動として,メンバーの多い岡山大学と徳島大学では定期的に対面の懇親会を開催しています.今後は他の大学にもメンバーが増え,それぞれの地域で若手研究者の憩いの場として機能していくことを期待しています.

図1 中国四国支部の月例会(2025年9月)の様子.

また,本稿が公開される頃にはすでに終了していますが,2025年11月8日には岡山大学にて,親学会のサブグループ支援制度を活用し,「中四国若手クライオ電顕ワークショップ」を開催します.クライオ電子顕微鏡は2024年に中四国地域で初めて岡山大学に導入され,支部内でもワークショップ開催を望む声が多かったことから,今回の開催に至りました.本ワークショップが盛会となり,中四国地域の若手研究者のネットワークがさらに広がっていくことを願っています.

中国四国支部では新規メンバーを随時募集しています.参加を希望される方は登録フォーム(https://forms.gle/RJKdVgZh3hXrmKEn9)にご記入ください.

 膜コミュニティの活動

膜コミュニティについては過去の若手の会だより1)でも簡単に紹介されていましたが,ここではより詳しくご説明いたします.まず,活動内容を紹介する前に,私自身の研究について簡単に述べさせていただきます.私は分子動力学シミュレーションを用いて,細胞膜の物性や脂質ドメインの構造・ダイナミクス,さらに膜タンパク質と脂質ドメインとの相互作用を解析することで,細胞膜を構成する脂質の多様性や非対称分布の機能的な意義を明らかにすることを目指しています.研究を進める中で,脂質膜や生体膜を対象としたwetの実験に関する論文を読む機会が多くあり,実験手法をより深く理解するためにも,wetの実験研究者との交流を求めていました.ちょうどそのような折,若手の会のDiscordサーバーで生体膜を対象とした若手コミュニティの立ち上げを呼びかける投稿を偶然目にし,すぐに参加を希望しました.

膜コミュニティには現在9名のメンバーが所属しており,研究分野は人工生体膜,リポソームを用いたDDS,抗菌ペプチド-膜相互作用,細胞外小胞など,多岐にわたります.なかには,夏学での私の発表を面白いと感じて参加してくださった方もおり,大変うれしく思っています.定期的な活動はまだ行っていませんが,ときおり夜にオンラインで集まり,各自の研究について3~4時間ほど活発に議論を交わしています.私以外のメンバーはwetを専門とする研究者ですが,分子シミュレーションに興味を持っている方も多く,互いに有益な情報交換の場になっていると感じています.今後は定期的な雑誌会を開催することも検討しています.膜コミュニティでも新規メンバーを歓迎しておりますので,ご関心のある方はぜひ私までご連絡ください.

 おわりに

本稿では,夏学での筆者と若手の会との出会いからの1年を振り返りつつ,私が関わってきた中国四国支部と膜コミュニティの活動について,宣伝も兼ねてご紹介いたしました.振り返ってみると,いずれのコミュニティにおいても,ちょうど自分が必要としていたタイミングで発足を呼びかけてくださる方が現れていました.大変幸運であったと感じる一方で,もっと早く若手の会の活動に参加していれば,大学院での研究生活がより充実したものになっていたのではないかと,少し後悔もしています.本稿が,若手の会の活動参加を検討されている方々の後押しとなれば幸いです.

最後に,日頃より活動にご協力いただいている中国四国支部および膜コミュニティのメンバーの皆様,そして若手の会に参加して間もない私に本稿執筆の機会を与えてくださった若手の会の皆様に,心より感謝申し上げます.

文献
 
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