2020 年 16 巻 p. A47-A58
全国の鳥類の分布を1974-1978年と1998-2002年に調べた環境省の「鳥類繁殖分布調査報告書」から,北海道の鳥類の分布域の変化と,その特徴を明らかにした.北海道では,夏鳥で分布が縮小,変化なし,拡大している種がそれぞれ確認されたが,縮小している種では分布域が大幅に縮小している種が多かった.留鳥については,縮小している種の割合が少なく,拡大している種の割合が高い傾向がうかがえた.生息環境についてみると,夏鳥では,分布が縮小している種は,草原や農村に生息する種だけでなく,森林に生息する種も相応に確認された.また拡大している種については,草原や農村に生息する種の割合が少なく,森林に生息する種が多かった.分布域が特に縮小していた種は,ハリオアマツバメ Hirundapus caudacutus,アカモズ Lanius cristatus,シマアオジ Emberiza aureolaの3種であった.アカショウビン Halcyon coromanda は全国的には分布が拡大していたが,北海道では分布域が縮小していることが明らかになった.また,オオジシギ Gallinago hardwickii,モズ L. bucephalus,ヒバリ Alauda arvensis,スズメ Passer montanus など,近年個体数が減少しているという報告がある種は,今回の分析では著しい分布域の縮小傾向は確認されなかった.今後,これらの種については,生息数の動向を注視していく必要がある.