2023 年 19 巻 p. A21-A30
第2回(1997-2002)と第3回(2016-2020)の全国鳥類繁殖分布調査の記録をもちいて,スズメ Passer montanusがどういう環境でどれくらい減少しているかを推定した.本種の個体数の減少幅が大きい調査地点は,農地面積が広く気温が高い傾向があった.しかし,その減少は,土地利用の時間的変化では説明できなかった.そのため,これらの調査地点で本種の個体数の減少が大きい理由として次の3つが考えられる.1) 本種の生息適地であるためもともとの個体数が多く,同じ割合で減少していても減少数が大きい,2) 土地利用の変化を伴わない形で本種の餌生物が減少している.3) 建物の建て替わりによって隙間のある建物が減少するなどによって本種の営巣場所が減少している.スズメの生息環境を考慮して,日本全体でどれくらい減少しているかを推定した結果,第2回と第3回の間の18年間でスズメの個体数は62.1%に減少していると推測された.これは,スズメが約26年で半減することを意味する.