Bird Research
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原著論文
1990年代から2010年代にかけての東京都心部でのスズメの増加と郊外での減少
植田 睦之 三上 修
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2025 年 21 巻 p. A1-A10

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抄録

日本では1970年代以降,スズメが減少している.しかし,2010年代に行なわれた広域調査から,スズメの生息環境として不適と考えられていた都心部での個体数の増加が示唆されている.そこで,東京都鳥類繁殖分布調査のデータおよび現地調査のデータから,スズメの1990年代から2010年代の個体数の変化とその原因について検討した.その結果,東京では,スズメが郊外で減少し,都心部で増加していることが明らかになった.スズメの採食地となる緑地も郊外では減少し,都心部では増加していたことより,土地利用の変化がスズメの増減に影響していると考えられた.しかし,都心部においてスズメが多くなったにもかかわらず,2010年代の緑地面積は,依然として都心部よりも郊外の方が広く,緑地面積だけではスズメの変化を説明できないこともわかった.営巣場所がおもに電柱であるのは郊外も都心部も一緒で,営巣可能な場所による説明も考えにくい.捕食者である猛禽類は,都心部で少なかったので,捕食者の分布が影響している可能性が考えられた.巣立ちヒナ数は1羽の場合が多く,繁殖成功率は都心部の方が低かった.営巣場所となる電柱の多さや捕食者の少なさから都心部にスズメが集まったものの,繁殖成功度が低いというエコロジカルトラップになっている可能性もあるが,複数回繁殖の多さでそれを補っている可能性もある.そうしたことを明らかにするためには,より詳細な個体群動態の研究が必要である.

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