2023 年 2023 巻 52 号 p. 59-71
これまで紅海とアラビア海を含むインド洋の固有種と考えられていたベラ科タキベラ属魚類Bodianus opercularis (Guichenot, 1847) に同定される2標本(標準体長20.2–44.5 mm)が小笠原諸島から得られた。これらは本種の標本に基づく太平洋における初記録となるため、詳細な記載とともにここに報告する。本研究ではこのうちの1標本(KPM-NI 7936、標準体長45.5 mm)に基づき、本種に対して新標準和名「アカシマタキベラ」を提唱する。 本研究ではアカシマタキベラと、本種と異所的に生息する近縁種と考えられていた西太平洋固有のタキベラ属魚類であるBodianus neopercularis Gomon, 2006の分布記録を再検討した。その結果、アカシマタキベラはインド-西太平洋の広域に分布し、インド洋においては紅海およびアラビア海、ケニア、コモロ諸島、マダガスカル、マスカレン諸島西部、クリスマス島、西太平洋においては日本とマーシャル諸島に分布することが明らかになった。その一方でB. neopercularisの正確な分布記録はマーシャル諸島に限られることが明らかとなった。