抄録
埴谷豊の小説「死霊」の第5章前半を分析した。 分析の目的は、埴谷豊がこの小説を思考する行為に最も重点を置いて書いたことを明らかにすることである。分析の対象は主に3つのシーン。 1) 革命組織のトップがスパイ活動で組織を裏切った人物を尋問するシーン。 2) 尋問者と被尋問者の哲学的対話の場面。 3) 被疑者が処刑されるシーン。
分析の結果、埴谷豊は、自律の法則に対する不快感を克服することこそが、人間が自分自身で徹底的に考える唯一の方法であると信じていたことが明らかになった。 最も重要な人間の行動は、考えるのをやめたり、問題を変えたり、詭弁を作ったりするのではなく、自分自身で徹底的に考えることであると彼が主張したことを明らかにした。