抄録
これまで教師たちは,学校現場において数多くの課題に直面し,さまざまな工夫や努力によってそれらを乗り越えてきた。その経験を通して,教育実践を滞りなく,豊かに遂行していく原動力となる実践知が生み出され,継承されてきた。
しかし現在,子どもや親の多様化,教育活動や要求水準の高度化,多忙化と長時間労働など,学校教育や教師をめぐる課題が山積している。その中で学校教育の実践知もまた危機に陥っているならば,それはどのような意味において危機なのか,そして,その危機はどのような要因と関わっているのだろうか。本稿では,それらの問いを追究することを通して,危機を乗り越える方向性について考察したい。