抄録
18歳選挙権実施に伴って,2015年に文部科学省(文科省)が「政治的教養の教育と高校生の政治活動に関する通知」を出し,主権者教育をすすめるよう通知した。これに先立つ2011年には総務省「常時啓発事業のあり方等研究会」が報告書「社会に参加し,自ら考え,自ら判断する主権者を目指して~新たなステージ『主権者教育』へ」を発表した。そこでは若者の投票率について,衆議院議員選挙で比較すると,20歳代は昭和50年代では全体の投票率より10ポイントほど低かったのが現在では20ポイントほど低いと指摘した。その原因には学校教育があるとして,「政治や選挙の仕組みは教えるものの,政治的・社会的に対立する問題を取り上げ,政治的判断を訓練することを避けてきた。」として政治的リテラシーを身に着けていけるような主権者教育を提起しており,文科省の通知はこれに沿った内容になっている。
文科省の2015年の「主権者教育」通知以降,10歳代の投票率は40%台であるが,20歳代は30%台と低投票率が続いていて,世代別でも最低,世界の若者の投票率と比較しても最低レベルにある。こうした低投票率にみられる日本の若者の主権者意識を分析し,欧米のシティズンシップ教育と比較しながら,日本の主権者教育に求められているものを明らかにしたい。