抄録
日本の公文書において「アクティブ・ラーニング」という用語が初めて使用されたのは,2008年3月の中央教育審議会大学分科会制度・教育部会の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」である。当初は高等教育における授業改革のために用いられたこの用語は,その後「主体的・対話的で深い学び」に名前を変え,初等中等教育の教育方法改善を示すキーワードとなっていく。日本の教育界全体に影響を与えるようになったアクティブ・ラーニングという用語は,初出の「審議のまとめ」では,大学教育改革のための具体的方策として,以下のように紹介されている(「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」24頁)。
「学習の動機付けを図りつつ,双方向型の学習を展開するため,講義そのものを魅力あるものにすると共に,体験活動を含む多様な教育方法を積極的に取り入れる。学生の主体的・能動的な学びを引き出す教授法(アクティブ・ラーニング)を重視し,例えば,学生参加型授業,協調・協同学習,課題解決・探求学習,PBL(Problem/Project Based Learning)などを取り入れる」
大学生の学びを「動機付け」,一方通行ではない「双方向」の,「魅力ある」講義にするための「主体的・能動的な学びを引き出す教授法」がアクティブ・ラーニングとされている。さらに,上記の「審議のまとめ」で注目されるのは,アクティブ・ラーニングの例としていくつかの具体的な学習方法が列挙されていることである。本稿では,その中でも特に「協同学習」の基本的な理解を通して,「深い学び」を実現するためのアクティブ・ラーニングのあり方について考えたい。