日本学校教育学会年報
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Print ISSN : 2434-9224
第2部 研究論文
「新時代の言語教育」を考える
多様な言語観から見る英語教育の課題と小中高接続の在り方
村松 麻里
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 2 巻 p. 79-90

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抄録

今,日本の英語教育は新たな変化を迎えようとしている。小学校では2020年,さらに,中学では2021年,高校では2022年より新学習指導要領が全面実施となる。特に小学校段階では5・6 年生で英語が外国語科として教科化されること,外国語活動のスタート時期が3・4 年生へと前倒しされること,その結果,小学校全体での外国語の授業時間が210単位時間となり,従来の3 倍となることなどから,今,世間でも大きな注目を集めている。これまでの小学校外国語は教科ではなく「コミュニケーション能力の素地を養う」ことを目的として,外国語の音声や基本的な表現に「慣れ親しませる」ものであったが,今後は英語の4 技能の内の「聞く・話す」だけでなく,「読む・書く」も段階的に強化され,小学校段階から小中高接続を意識した系統だった学習内容が取り扱われることが学習指導要領に示されている。小中高の各段階で「コミュニケーションの素地・基礎・能力」を養う「言語活動」を軸とした授業を行うことが明示され,これまで小学校にはなかった目標語彙数が新たに600~700語と設定され,中学・高校の語彙数もそれぞれ従来の数から引き上げられた。さらに,欧州評議会のヨーロッパ言語共通参照枠( CEFR) を用いた指標が小中高それぞれに設けられたことなどからも,日本における英語教育は,全体としてより強く各学校段階の連携・接続を意識した形で,高度化することが目指されていると言える。

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