電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
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ISSN-L : 1881-9567
解説論文
ワイヤレス給電を成功に導く高周波回路理論
大平 孝
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2021 年 15 巻 1 号 p. 15-22

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抄録
ワイヤレス給電システムの一般的ブロック構成を示し,各ブロックの設計開発に役立つ基本理論を紹介する.結合系の最大電力伝送効率を支配するkQ 理論を述べる.一般化kQ 式を用いることで,電界や磁界など様々な結合方式の設計が可能になる.インピーダンスと反射率の関係を直感的に捉えることができる複素数平面を示す.この平面上でインピーダンスを頂点とする三角形の二辺の長さの比が反射率である.反射率と定在波比の関係を視覚的に捉えるための教材として考案されたゴムひもモデルを示す.このゴムひもモデルを使えば,数式も電卓も用いることなく,計算尺のような感覚で定在波比の振舞いを習得できる.結合系において,入力ポートと出力ポート両方で同時に整合をとることの重要性を述べる.電圧定在波比を二乗した電力定在波比の導入で,従来のスミス図表の中心付近が拡大される.インピーダンス平面上の2 点間を結ぶ曲線の長さを回路設計規範とするという考え方を述べる.高周波インバータを高効率で動作させるための負荷条件は複素数平面上で測地線となる.ダイオード整流回路で電源と負荷の抵抗比が流通角と電力変換効率を決定する.ここで述べた高周波回路理論は今後多彩なワイヤレス給電系の開発に大きく貢献する.
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