日本作物学会紀事
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栽培
バレイショのマクロチューバーを種イモとする圃場栽培における 収量形質の品種間差異の作用機作
津田 昌吾森 元幸小林 晃高田 明子
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2011 年 80 巻 2 号 p. 165-173

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抄録
バレイショ採種での低増殖率を解決する一つの手段として,器内培養で大量に増殖したマイクロチューバーを種イモにする栽培(MT栽培)が検討されている.これまで,MT栽培では収量形質に大きな品種間差異が生じることが認められているが,その作用機作や年次安定性は明らかになっていない.そこで,本研究では,MT栽培特性の異なる4品種を用いてMT栽培および慣行の種イモを用いる栽培(CT栽培)を5ヵ年行い,生育・収量を比較した.各年次とも,塊茎数のCT栽培に対するMT栽培の割合(MT/CT比)と平均塊茎一個重のMT/CT比の間には有意な負の相関関係が認められ,CT栽培と比べMT栽培で一個重の低下は小さいが塊茎数が大きく減少する品種(個重型)と,塊茎数の減少は小さいが一個重が大きく低下する品種(個数型)に分かれた.この理由を解析したところ,CT栽培で各品種とも塊茎肥大初期に塊茎数が決定しているのに対して,MT栽培ではCT栽培に比べて塊茎数の決定時期が遅れ,その後の塊茎数増加割合に有意な品種間差異が認められた.この塊茎数増加割合が大きい品種ほど塊茎数のMT/CT比が大きくなり,MT栽培で個数型になった.また,塊茎数増加割合と塊茎肥大初期の塊茎生重の間に有意な負の相関関係が認められ,塊茎数決定時期(塊茎形成の終了時期)の早晩に塊茎肥大初期における塊茎肥大量が関与することが示唆された.本研究で明らかになった品種特性を利用することにより,従来よりも増殖率の高いMT栽培を確立できる可能性がある.
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© 2011 日本作物学会
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