電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン
Online ISSN : 2186-0661
ISSN-L : 1881-9567
解説論文
水中光無線通信技術の研究開発動向
塙 雅典中村 一彦
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2022 年 15 巻 4 号 p. 298-306

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抄録

近年,海底資源開発や浅海域でのレジャー応用などを目的として水中光無線通信技術の研究開発が進められている.2018 年には電子情報技術産業協会(JEITA)共創プログラムの支援を受けて,研究所・企業・大学が参加するAqua Local Area Network(ALAN) コンソーシアムも設立され,少しずつではあるが研究開発の裾野が拡大している.地上で広く無線通信に用いられている電磁波は水による減衰が著しく大きいことから,水中環境における無線通信媒体としては適さない.水中無線通信にはこれまで主に超音波の利用が検討されているが,その通信速度はkbit/s 台に制限される.一方,特に400 〜 550 nm 程度の波長帯(紫色〜緑色)の可視光は水による吸収係数が他の波長帯に比べて著しく小さいことから,これらの波長帯の光源を用いた高速な光無線通信技術が検討されている.通信速度だけであれば特殊なレーザの利用により100 Gbit/s を実現した報告もなされている一方,通信距離の延伸や水中での通信リンクの確立手段,水中(海中)通信路の伝搬特性の解明など,まだ研究がほとんど行われていない点も多く,実用化にはほど遠い状況である.本稿では水中光無線通信技術の基礎,技術的課題や近年の研究開発動向とともに,筆者らのこれまでの取組みを紹介し,関連分野の研究開発活動の活性化の一助としたい.

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