抄録
コウモリは,牙をむき出してヒトの血を吸う不気味な生き物だと思われているかもしれない.本論文ではコウモリの真の姿を紹介する.暗闇で活動するコウモリは,視覚に頼ることができず,音を用いて世界を“見る” 能力を身に付けた.コウモリが放射する音は,我々ヒトには聞くことのできない“超音波” と呼ばれる高い音色の音である.超音波を使って周囲を把握することをエコーロケーションと呼び,本論文では特に,コウモリが超音波をどのように使い生活しているのか,また超音波で“見る” 世界とはどのようなものなのかを,現在明らかになっている知見を基に紹介する.本論文を読んだ後,小さな体で賢く振る舞うコウモリを,より身近に感じて,生物とその生物から垣間見える音の物理にも興味を持って頂けると幸いである.