2007 年 2007 巻 1 号 p. 1_39-1_49
2006年よりサービスが開始された「ワンセグ放送」について,同サービスで用いられている技術の解説を行い,その動向を探る.ワンセグ放送は,日本における地上デジタルテレビ放送の各チャネルのうちの1セグメントを用いて,携帯電話等の端末で放送を受信することを可能とする日本オリジナルの標準規格である.同方式の特長を理解するために,まずディジタル変調とは何か,その中でもOFDM変調とはどのような優位な点をもっているかを述べる.次に,セグメント(Segment)構造について解説し,このような構成のもとに送られるワンセグ放送信号の送信側での信号処理の流れを概説してその伝送基本パラメータを紹介する.併せて理解を深めるために,移動体向けテレビ放送をめぐる世界の標準化競争の現況,及びワンセグ放送で用いられている高能率映像符号化の標準方式;H.264/AVCについてサービスに関連する事項を中心に簡単に説明する.最後に,ワンセグ放送が今後社会に受け入れられ活用されていくための要件や発展のためのシナリオについて少し検討し,今後への期待を述べる.