2009 年 2009 巻 9 号 p. 9_60-9_71
本稿では,商用シミュレータQualNetとScenargieの解説を行っている.両シミュレータとも基本設計から並列処理による高速化を念頭に置いて設計されている点に特徴があり,忠実なモデルの実行やシミュレート可能なネットワーク規模の増大に寄与している.また後発のScenargieは,実世界の表現能力を向上させることや性能評価作業の効率を改善することを念頭に開発が進められている.QualNetについては,その開発の歴史として,並列処理ライブラリPARSECやQualNetの前身であるGloMoSimの並列処理高速化技術,商用シミュレータとしてのQualNetの特徴について解説している.Scenargieについては,そのねらいである実世界の表現能力の向上を実現するGIS(Geographical Information System)技術とマルチエージェントシミュレーション技術,シナリオ構築及び評価結果の集計・分析の効率化を実現するGUIによるシナリオ構築環境やデータベースとの連携技術について解説している.