抄録
発表者らはハイゴケ(H.plumaeforme)の気相成分が他のコケ植物に及ぼす影響を調査した.まず,モデル植物であるヒメツリガネゴケ(P. patens)の原糸体をLED 照明で連続照射しながらハイゴケと同一培地上で育て,約1か月後にヒメツリガネゴケの茎葉体の成育面積を画像解析ソフトによって測定した.その結果,ハイゴケと共培養したヒメツリガネゴケの方がヒメツリガネゴケ単独培養時よりも茎葉体成育面積が小さいことが示された.このことから,ハイゴケから放出または分泌される物質により原糸体成長が抑制されることが示唆された.次に,直接的な接触や浸出液による影響を排除して気相中成分のみによる影響を確認するために,培地を隔離した実験系を組み立てた.上記と同様に培養した結果,ヒメツリガネゴケの成長阻害が確認された.これらより,ハイゴケの気相成分がヒメツリガネゴケの成長を抑制する可能性が示された.