武道学研究
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ブルーの柔道着は競技結果に影響をもたらすか
マツモト デビット・金野 潤ハタ ステファニー・武内 政幸
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2007 年 39 巻 3 号 p. 1-7

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抄録

柔道は名実共に世界の柔道に発展した。しかし,この柔道の国際化は競技における体重制の導入,さらにその細分化を進め,試合のルールにしても次第に微細な制約を設け,勝負の基準ブレークダウンした柔道のスポーツ化,競技化の傾向に拍車がかかり,今日では柔道の哲学や価値観モラル等の伝統的な考え方と相反することにもなっていると危惧を抱く議論も多い。中でも特に論議を呼んだのがカラー柔道着問題であった。
国際柔道連盟は試合をする選手の一方にブルーの柔道着を着用させることによって,審判や観客などが試合中の選手の動きや技の効果をより鮮明に見分けることが出来るように,国際大会においてブルー柔道着の導入を提案し,種々論議の結果,1997年に議決し,1998年 1月より実施した。
我々は10年近く前のこの議論のなかで,レトリックや討論に頼るのではなく,科学的にこの問題を分析することが重要と考え「柔道におけるリーダーシップと科学の重要性― カラー柔道衣問題― 」題し,本誌に発表した。
本研究は,国際大会においてブルー柔道着の導入後,柔道着の色によって試合の結果にバイアスがあるかどうかを社会心理学的に検討すべく,2001年,2003年,2005年の柔道世界選手権,そして,2004年アテネオリンピックという4つの大きな国際試合において,ブルーの柔道着を着ている選手の試合の勝率を分析した。
その結果,ブルーの柔道着を着ている男子の選手には勝率の高いバイアスが統計的に有意を得たが,女子にはなかった。さらに,このバイアスは試合の一回線から最後まで,そして2001年から2005年まで高くなった。

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