武道学研究
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スペインの大学カリキュラム剣道
本多 壮太郎
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2007 年 40 巻 2 号 p. 51-61

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抄録

本稿は、スペイン・バレンシア大学において、同国内の大学で唯一開講されている授業としての剣道講座について報告する。
バレンシア大学は、冬季集中講座の1つとして、1996年より剣道講座を開講している。本稿では、まず剣道が同大学において授業として導入されるに至った経緯、発展過程、また、その過程に於いて生じた問題点について報告する。
次に、2006年12月26日より29日まで開講された剣道の授業における筆者の参与観察の結果を報告する。これらの報告は、スペイン人の指導者による授業の内容の詳細と共に、参与観察、及び、質問紙、インタビュー、ビデオ録画を通して得られた学生達の授業への反応の分析の結果と考察を含む。
1日8時問という長い時間の授業、また防具がないという状況の下、学生達が授業中にやる気を失わないようにすることが重要であり、そのための指導者のアイデアの例として、ゲーム活動を通しての基本学習や、同大学剣道部の部員達による演武、DVDによる剣道や他の武術・武道の様々な側面の紹介などが用いられた。
学生達にとって初めての剣道の体験であったにもかかわらず、指導者の巧みなアプローチに導かれ、それぞれの学習課題に熱心に取り組む姿が観察された。
本稿が、日本国外の大学において、剣道の授業は防具がなくとも、どのように実施されうるかを提示するうえで有益な一資料になることを期待する。

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