武道学研究
Online ISSN : 2185-8519
Print ISSN : 0287-9700
ISSN-L : 0287-9700
膀下丹田に関する実験的研究
浅見 高明
著者情報
ジャーナル フリー

1977 年 9 巻 3 号 p. 1-5

詳細
抄録

古来,武道においては「臍下丹田に力を入れる」と言って丹田の位置と働きについて注目してきた。臍下丹田とは広辞苑によると「臍の下の下腹部にあたる所,ここに力を入れると健康と勇気を得る」と書かれている。
そこで,本研究では立位ならびに坐位における丹田の位置を作図法によって求め,秋田式重心位置測定器によって機械的に求めた人体重心位置との関係を観察した。立位における丹田作図法は長谷川光洋「身体均整の科学」62頁の図-2に準拠し,坐位における丹田は佐藤通次「身体論」の221頁の作図法によった。
被検者は都内某大学柔道部員30名(平均年令20.0歳±1.28,段位2.5段±0.62)と剣道部員30名(平均年令20.5歳±1.28,段位3.3段±0.62)であった。
知見
(1)立位における重心垂線は,剣道選手の場合足長を100%とすると踵方向より51.4%のところを通りわずかに前方にあり,柔道選手では46.5%のところを通って幾分後方におりた。
(2)柔道選手30名の立位仁おける丹田高と重心高は一致せず,丹田の方が重心よりも6.6cm低く,丹田垂線は重心垂線よりもかなり前方(28.8%)にあった。坐位における丹田は重心よりも7.1cm低く,重心垂線は下腿中央よりも9%後方におりた。
(3)柔道選手30名に正坐法を指導して指導前後の丹田位置と重心垂線を比較したところ,指導後には丹田位置は1.7cm低くなり,重心垂線も48.2%の所を通り,丹田垂線50%に極めて近くなった。すなわち指導前には足首辺に体重が集中していたのが,指導後には下腿全面に均等に体重が配分されるようになった。
(4)正坐法を指導した後では,体幹起立筋の放電が著しく増大した。

著者関連情報
© 日本武道学会
次の記事
feedback
Top