佛教文化学会紀要
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研究発表
『無縁集』・『師秀説草』の成立に関する一考察
安孫子 稔章
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2019 年 2019 巻 28 号 p. 1-17

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抄録

 法然遺文『逆修説法』の異本である『無縁集』と『師秀説草』がどのような史料を底本として成立したのかを明らかにするため、『無縁集』・『西方指南抄』所収『法然聖人御説法事』・『黒谷上人語灯録』所収『逆修説法』の三書を比較検討した。結論として、『無縁集』・『師秀説草』は『法然聖人御説法事』と同じ書写の系統にあると考えられるが、現在伝わる親鸞書写本を底本としていると考えることは難しく、親鸞が書写・省略する以前の和文体『法然聖人御説法事』、もしくはそれに近い史料を底本として成立したと考えられる。本論の考察結果は、親鸞以前に『西方指南抄』が成立していたことを直接的に示すものでは決してないが、親鸞が省略する以前の『法然聖人御説法事』に近い和文体の史料が存在していた蓋然性が高いことを示すものであり、よって法然遺文集の一つである『西方指南抄』は親鸞が編纂したものではなく転写したものにすぎないとする学説を間接的に支持すると考えられる。

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