日本トキシコロジー学会学術年会
第38回日本トキシコロジー学会学術年会
セッションID: P-125
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一般演題 ポスター
gpt deltaトランスジェニックラットを用いたライフステージ(週齢)を考慮したアクリルアミドの遺伝毒性評価
*小山 直己安井 学木村 葵高見 成昭鈴木 拓也増村 健一能美 健彦増田 修一木苗 直秀松田 知成今井 俊夫本間 正充
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抄録
[背景/目的] 食品の安全性において、加熱調理過程で生成するアクリルアミド(AA)が問題になっている。特に、AAはスナック菓子、ベビーフード等に多く含まれていることから、子供への影響が懸念されている。AAは生体内で薬物代謝酵素CYP2E1により、グリシダミド(GA)に変換され、その遺伝毒性や発がん性が増強すると明らかになっている。ヒトおよびラットの幼若期と成熟期では、CYP2E1等の活性に差があり、子供と大人ではAAを摂取した場合の発がんリスクが異なることが考えられる。[方法] 本研究ではライフステージ(週齢)の違いによるAAの遺伝毒性感受性の違いを検討した。 3週齢(幼若),7週齢(成熟)の雄 のgpt delta トランスジェニックF344ラットにAAを20, 40, 80 ppmの濃度で28日間飲水投与させ、各臓器における遺伝毒性試験[突然変異(肝臓、精巣)、小核試験(骨髄)、アルカリコメット試験(肝臓)]を実施した。また、各臓器(肝臓,精巣,乳腺,甲状腺)におけるGA由来のDNA付加体(N7-GA-Gua)量をLC/MS/MSを用いて測定した。[結果] AAを飲水摂取させることにより、幼若および成熟いずれの群においても肝臓に対するDNA損傷を確認した。また,幼若の80 ppm摂取群で,骨髄の小核誘発頻度は有意に増加し,精巣では、gpt遺伝子突然変異頻度が有意に増加した。さらに,DNA付加体(N7-GA-Gua)の生成が顕著にみられ,成熟群より幼若群でDNA付加物レベルが有意に高いことが分かった。[考察] AAの遺伝毒性は,骨髄で染色体異常誘発性を示し,肝臓では,DNA損傷性を示した。また、精巣では、幼若群で強い遺伝毒性が確認され、その強さはDNA付加体レベルと相関していた。AAの曝露によって,幼児に対する発がんリスクが高まることが懸念された。
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© 2011 日本毒性学会
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