佛教文化学会紀要
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論文
小学校令期における仏教界の俗人教育参入とその目的についての一考察
濱田 由美
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キーワード: 仏教界, 俗人教育
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2019 年 2019 巻 28 号 p. 117-144

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抄録

 1886(明治19)年に公布された「小学校令」により導入された小学簡易科制度は、無授業料が原則である。貧困層の子弟を就学させることで、学校教育の普及が目指されたのであり、維持費は区長村費で賄う事が定められていた。東京府には仏教寺院が設立した簡易科小学校が多く設けられており、教員不足を補うため、簡易科小学校教員速成伝習所も2カ所開校していた。入学者の多くは地方出身の僧侶や徒弟であり、彼等の目的は郷里での貧児教育であったと思われるが、実際には希望に添った活躍が出来ないまま制度は廃止となっている。仏教界が貧児教育に関わった目的は、慈善的活動としてだけではなく、「仏教自身に於ける効益」への期待があったと思われるが、実際には普通教育がおこなわれているに過ぎなかった。文部省も「宗教ト教育トヲ混スヘカラサル」事を求めており、制度廃止によって、仏教界の貧児教育活動は急速に後退したとの印象を残す結果に終わっている。

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