地質調査研究報告
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福島県安達郡日山周辺に分布する阿武隈花崗岩類の地質と岩石記載
亀井 淳志高木 哲一久保 和也
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2003 年 54 巻 11-12 号 p. 395-409

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抄録

福島県安達郡日山周辺には,阿武隈花崗岩類が斑れい岩類・変成岩類の小岩体を伴って広く分布している.花崗岩類は記載的特徴と貫入時期から古期花崗岩類と新期花崗岩類とに大別される.古期花崗岩類は普通角閃石を有し面構造が発達するが,新期花崗岩類の多くは有色鉱物に乏しく,カリ長石粗粒結晶や白雲母を有し塊状である.本地域に分布する古期花崗岩類を長屋岩体・鹿山岩体・石森岩体に区分し,新期花崗岩類を古道岩体・三春岩体・葛尾岩体・五十人山岩体・初森岩体に区分した.斑れい岩類は,花崗岩類中のルーフペンダントとして産する.深成岩類の全岩組成は,組成変化図において岩体毎に異なるクラスターを形成する.また,岩石の帯磁率は一般にチタン鉄鉱系列の特徴を示す. 長屋岩体・鹿山岩体・葛尾岩体・五十人山岩体の成因を,微量元素組成の解析に基づいて考察した.その結果,本地域の長屋岩体・鹿山岩体のマグマは,1 G P a 以下の圧力かつ水蒸気圧が高い状況で玄武岩質岩石が融解して発生したと説明できる.一方,葛尾岩体・五十人山岩体の成因については2つの可能性が考えられた.1つは,玄武岩質岩石が1 GPa以下の圧力かつ水蒸気圧が低い状況で融解して発生したマグマから固結した可能性,もう1 つは,斜長石の分別が有効的に作用したマグマから固結した可能性である.

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© 2003 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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