地質調査研究報告
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最新号
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論文
  • 武藤 俊, 高橋 聡, 村山 雅史
    2025 年 76 巻 1-2 号 p. 1-29
    発行日: 2025/06/11
    公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー
    ジュラ紀付加体中の遠洋域深海堆積岩層において,コノドント生層序は世界規模で対比可能な時間軸を与える.北部北上山地は,特にコノドント生層序区分が不完全な古生代の時代に関して研究を進展させうる層序記録を保持している.本報告では,岩手県岩泉町に位置する大鳥セクションと名付けた深海堆積岩セクションにおいて産出したコノドント化石を報告する.コノドント化石はマイクロフォーカスX 線CT を用いた手法によって画像を取得した.同定された種は,Mesogondolella clarki, Mesogondolella aff. donbassica, Mesogondolella cf. bisselli,Mesogondolella cf. idahoensis,Jinogondolella cf. palmata,Jinogondolella postserrata,Sweetognathus iranicus,Jinogondolella altudaensis,Jinogondolella xuanhanensis である.これらのコノドントはモスコビアン期(ペンシルバニアン亜紀中期,石炭紀)からキャピタニアン期(グアダルピアン世後期,ペルム紀)の年代を示す.本研究ではさらに,先行研究による北部北上山地におけるコノドント産出報告をレビューした.先行研究でも石炭紀後期から三畳紀の時代がコノドント化石をもとに指示されているが,これらのうちペルム紀の年代の大部分は分類記載と画像が示されていないために検証できない.
  • 武藤 俊, 伊藤 剛, 大関 仁智
    2025 年 76 巻 1-2 号 p. 31-50
    発行日: 2025/06/11
    公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー
    東北日本の北部北上帯ジュラ紀付加体においては,白亜紀深成岩類の接触変成作用により放散虫化石の分離が困難であるため,付加体形成史の解明が妨げられている.本地域で放散虫化石の分離に成功した研究例には,マンガンノジュールを扱ったものがある.本研究では,5万分の1地質図幅「門」地域西部の3地点にて泥質岩中に胚胎されるマンガンノジュールを採取し,これらから保存良好な放散虫化石を抽出した.得られた放散虫化石群集の年代は,灰色層状泥岩から採取した2試料についてはそれぞれ前期バッジョシアン期とアーレニアン期からバッジョシアン期(いずれも中期ジュラ紀)と,構造的混在化を受けた可能性がある泥岩から採取した1 試料についてはバッジョシアン期(中期ジュラ紀)と推定した.これらの年代は検討した層準の付加時期を近似できる.「門」地域西部からの年代指標となる放散虫化石の報告は,本研究が初めてである.
  • 武藤 俊
    2025 年 76 巻 1-2 号 p. 51-100
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー
    東北日本北部北上帯ジュラ紀付加体では,白亜紀深成岩類の変成作用に起因して放散虫の報告が少なく,付加体の形成時期の検討にはジルコン年代学が用いられてきている.本研究では,5万分の1地質図幅「門」地域のジュラ紀付加体中の砂岩中の砕屑性ジルコンと凝灰岩中の火成ジルコンのU–Pb年代を報告する.先行研究と合わせて,北上山地北部に分布する主なジュラ紀付加体の構造層序ユニットとその砕屑岩の年代は下記の通りである:レーティアン期から中期ジュラ紀または後期ジュラ紀前期の門馬ユニット,付加年代未詳の三巣子ユニット,アーレニアン期からバトニアン期の大鳥ユニット,バトニアン期からキンメリッジアン期の関ユニット,オックスフォーディアン期からキンメリッジアン期の高屋敷ユニット,付加年代未詳の茅森ユニット,キンメリッジアン期直後の江刈ユニット.これらのうち前者の6ユニットはこの順に構造的に累重している.江刈ユニットの厳密な構造的位置は確かではないが,年代からは高屋敷ユニットまたはより下位に対比され,垂直変位を持つ断層によってより古いユニットの間に再配置したと判断される.このような断層やキロメートルオーダーの褶曲構造によって,北部北上帯の付加体に見られる大局的な海洋側への若化極性は乱されている.
概報
  • 山崎 徹
    2025 年 76 巻 1-2 号 p. 101-131
    発行日: 2025/06/11
    公開日: 2025/06/27
    ジャーナル フリー
    5万分の1地質図幅「大河原」の作成にあたって識別した領家深成変成コンプレックスの岩体区分の地球化学的根拠を得るため,それらの全岩主成分・微量成分分析を実施した.先行研究によると,深成岩類の岩相的類似性から岩型ごとの識別が困難な場合や中間的な岩相の存在が指摘されていたが,本研究における産状や岩石記載に基づく岩型区分は,全岩化学組成の各種指標の組み合わせに基づく特徴によっても識別できることが明らかとなった.これらの全岩化学組成の特徴は,主として構成鉱物の量比に対応したものであるが,それらの違いは相互の単純な親子関係では説明できず,岩型ごとの個別の親マグマの存在を示唆する.さらに,予察的検討により約60 km離れた三河–東濃地方の明智地域に産する深成岩類とも類似した組成を示すことが確認され,野外での産状や岩石記載に全岩化学組成を組み合わせることによって,岩型の広域的な対比が可能であることが示唆される.
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