ジュラ紀付加体中の遠洋域深海堆積岩層において,コノドント生層序は世界規模で対比可能な時間軸を与える.北部北上山地は,特にコノドント生層序区分が不完全な古生代の時代に関して研究を進展させうる層序記録を保持している.本報告では,岩手県岩泉町に位置する大鳥セクションと名付けた深海堆積岩セクションにおいて産出したコノドント化石を報告する.コノドント化石はマイクロフォーカスX 線CT を用いた手法によって画像を取得した.同定された種は,Mesogondolella clarki, Mesogondolella aff. donbassica, Mesogondolella cf. bisselli,Mesogondolella cf. idahoensis,Jinogondolella cf. palmata,Jinogondolella postserrata,Sweetognathus iranicus,Jinogondolella altudaensis,Jinogondolella xuanhanensis である.これらのコノドントはモスコビアン期(ペンシルバニアン亜紀中期,石炭紀)からキャピタニアン期(グアダルピアン世後期,ペルム紀)の年代を示す.本研究ではさらに,先行研究による北部北上山地におけるコノドント産出報告をレビューした.先行研究でも石炭紀後期から三畳紀の時代がコノドント化石をもとに指示されているが,これらのうちペルム紀の年代の大部分は分類記載と画像が示されていないために検証できない.
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