地質調査研究報告
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論文
伊豆弧北端の火山岩類と地殻構造 ― 山北南大深度観測井の箱根火山,先箱根火山岩類から ―
津久井 雅志山崎 優松井 智之小山田 浩子上杉 陽林 広樹柳沢 幸夫笠原 敬司
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2007 年 57 巻 7-8 号 p. 197-215

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抄録

南関東足柄平野北縁の神奈川県山北町において,大都市大震災軽減化特別プロジェクト(大大特)により深度 2,035.4 m のボーリング掘削が実施された.足柄地域ではフィリピン海プレートが北アメリカプレートに対し部分的に衝突しながら沈み込んでいる,とされる. この 2 つのプレートは国府津‐松田断層,神縄断層,中津川断層系,塩沢断層系,日向断層などの衝上断層群で接しており,これらの衝上断層は全体として八の字形に配置している.掘削地点はフィリピン海プレートの北端に位置し,箱根火山の火山麓扇状地の上にある. 本研究では深度 0 m から 1,076.6 m までのオールコア試料を検討した.55 試料の全岩主成分分析と顕微鏡観察結果を基に,コアを 4 層序単位に分けた.最下部のグループI(深度 721.3 m 以深)は,年代的には足柄層群と同時期の堆積物であり,岩石学的に箱根火山とは異なる.一方,上位のグループII ~IV(深度 13 ~ 721.3 m)は箱根外輪山噴出物に相当する.したがって箱根火山の基盤最上部は海面下570 m にある.岩質と岩石学的観察からは,コア中に断層や層序単位の繰り返しを確認することはできなかった. これまでのボーリングのデータも含めて箱根火山の基盤岩の高度分布をまとめると,海抜 500 m 以上の尾根状の高まりが火山体中央部を南北に縦走し,東西山麓では海面下 370 ~ 700 m に没していることが推定された.

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© 2007 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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