2009 年 59 巻 7-8 号 p. 301-307
最近のカムチャッカとサハリンの地質調査研究は,太平洋の海からアジア大陸の陸域へと漸移する地域の新生界層序に新たな展開を見せてくれている.これらの地域では,多くの地域層序の「階区分」や異なる生物群や非生物のイベントが認められてきた.カムチャッカでは次のような地域的な階区分を識別している:ユージノ-イルピンスキイ階(暁新世),クランスキー・キラキーヌンスキイ・ガイルクハビランスキイ階(始新世),それにアルギンスキイ階(漸新統)である.これらすべての「階」は,浮遊性と底生有孔虫,貝類,大型植物それに珪藻化石を産する.それゆえ,本論でこれらの化石に基づいて,標準的な「階」とその階を細分する「帯」についてその概要を要約する. 暁新統と始新統の「帯」は浮遊性有孔虫の化石帯を,漸新統は珪藻化石帯を用いて確立されている.加えて,底生有孔虫化石に基づいて地域的化石帯が設定され,これは地域の層序対比に用いられている.最近これのデータに,古地磁気層序とマイオマーカーの新たなものが加わった.これらの地域的層序の「階」は基本的に岩相と堆積サイクルに基づいている.暖かい始新世の環境では,炭酸塩の浮遊性生物や貝類,それに亜熱帯的な植物が北太平洋全域に広がり,一方,漸新世に寒冷型の生物が出現したが,この次期,暖水系の生物群は暖かい南方に移動した.それゆえ,主要生物の温暖と寒冷系の相違は,この始新世から漸新世にかけて北太平洋で生じたことになる.