2009 年 59 巻 9-10 号 p. 439-459
河川・海域堆積物における粒度と元素濃度の関係を研究するため堆積環境の異なる河川・海域で採取された粒度の異なる堆積物を分析した.河川堆積物中の主・微量元素のほとんどは粒度の細粒化に伴って高濃度になる.しかし,K,Baにはその傾向がなく,これは珪長質岩類に由来するカリ長石が微細化しにくいためと考えられた.平野部の河川で得られた泥質堆積物では,P,Cu,Zn等の濃度が中粒部よりも粗粒部で高い試料があった.これら試料における粗粒な粒子は,造岩鉱物由来の砕屑物ではなく微小鉱物や植物片等に粘土質粒子が付着して団塊化したものと考えられた.海底堆積物においても多くの元素は粒度の細粒化に伴って高濃度になるが,逆に低濃度になる元素(Ca,Sr,As),顕著な濃度変化がない元素(Fe,Co,Ce,U,Y)があり,また日本海深部の粘土質堆積物中には砂質~シルト質堆積物の数倍の Mn,Moが含有されている.海底堆積物中のCa,Srの濃度変化は貝殻片等の石灰質堆積物の増減に由来しており,As,Fe,Mn,Mo等の濃度変化は風化・続成作用に伴う溶出,移動,沈殿や新鉱物の生成等が原因と考えられる.