地質調査研究報告
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論文
北部ベトナム産の鉛亜鉛鉱石の化学的特徴,特にインジウム含有量について
石原 舜三Tuan Anh Tran渡辺 寧Trong-Hoa Tran
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2010 年 61 巻 9-10 号 p. 307-323

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抄録

 インジウムに富む閃亜鉛鉱を探す目的で,ベトナム最北部の古生代堆積岩類に胚胎する鉛亜鉛鉱石を分析した.ここではインジウム(In)異常と共に,これら鉱床をミシシッピーバレー型とする見解も提案されている.今回の研究の結果,鉱床は下記のような多種類に亘ることが判明した.(1)REEに富む(最大 1210 ppm)鉛-亜鉛鉱床(Na Som).これは流紋岩と関係し,変質鉱物から高温熱水性と考えられる.(2)In とFe に富む亜鉛>鉛- 磁硫鉄鉱鉱床(Na Bop).これは還元的な高温熱水性である.(3)InとFeに乏しい閃亜鉛鉱>方鉛鉱鉱床(Lang Hich,Mi Tic, Phudo),(4)Mn 炭酸塩に富む鉄閃亜鉛鉱>方鉛鉱鉱床(Cuc Duong).上記2者は低温熱水性である.
 Bac Kan地区ではNa Bop鉱床の鉛亜鉛鉱石からは,経済性を持つIn異常が発見され,Cho Dien鉱床からは弱いIn異常が発見された.これら鉱石は花崗岩質岩脈に近い鉱床で産し,鉄に富む黒色閃亜鉛鉱と磁硫鉄鉱を多く含み,還元的高温熱水性環境下の生成である.Cho Dienでは多数の鉛亜鉛鉱床が発見されており,それらはCho Dienドーム構造を持つ古生層中に胚胎する.ドームの下部には珪長質貫入岩が潜在するものと思われ,その結果として多くの鉱床がここに生成されたものと考えられる.貫入岩はチタン鉄鉱系のスズ花崗岩であり,花崗岩に近い鉱床にインジウムは濃集した可能性が大きい.鉱石の閃亜鉛鉱中のインジウム最高値Insp=391及びNa Bop鉱山の亜鉛精鉱中の898 ppm Inは,共にインジウムが経済性を持つことを示唆している.

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© 2010 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
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