地質調査研究報告
Online ISSN : 2186-490X
Print ISSN : 1346-4272
ISSN-L : 1346-4272
論文
岩手県二戸市・青森県三戸町の海成上部中新統から産出した淡水湖沼生化石珪藻Mesodictyon japonicum Yanagisawa & H.Tanaka
柳沢 幸夫
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 72 巻 6 号 p. 479-493

詳細
抄録

現生の淡水プランクトン珪藻群集で優占するStephanodiscaceae科の珪藻は,後期中新世に,それまで繁栄していた淡水生のActinocyclus属の珪藻に取って代わって出現した.Mesodictyon属は,この交代期に最初に湖沼環境に入ってきたStephanodiscaceae科の重要な珪藻グループである.本研究は,岩手県二戸市と青森県三戸町に分布する海成上部中新統の舌崎層と久保層から淡水湖沼生珪藻Mesodictyon japonicum Yanagisawa & H.Tanakaの産出を確認し,その初産出層準が海生珪藻化石層序のNPD6B帯(Thalassionema schraderi帯)内(約8.3 Ma)にあることを示した.また,これまでに産出報告のある地域での本種の産出年代を吟味し,本種の初産出層準が8.7–8.2 Maの狭い年代範囲に収まり,東日本においてはある程度の同時性を示すことを明らかにした.現在までに得られたデータに基づくと, M. japonicumの出現時期はNPD6B帯の下限付近の8.7–8.6 Ma前後と推定される.

著者関連情報
© 2021 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
前の記事
feedback
Top