文化看護学会誌
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島の看取り文化を継承するケアとケアに息づく生活文化
坂東 瑠美大湾 明美田場 由紀砂川 ゆかり
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2021 年 13 巻 1 号 p. 1_48-1_56

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抄録

目  的
A島の介護保険サービス事業所(以下「B事業所」とする)の実践から,看取り文化を継承するケアに息づく生活文化を見出すことで,死を生活の場に取り戻し地域での看取りを推進する可能性について考察することを目的とした。
方  法
研究参加者は,事業所で島の死生観を共有している地元出身の介護職の研究参加者に対し,フォーカス・グループ・インタビューを実施した。インタビューのテーマは「在宅看取りケアとして実践していることは何か,その理由は何か」であった。分析は,島の介護職が実践している看取りケアについて,生活文化の観点からキーセンテンスを作成し,その特徴を命名した。倫理的配慮は,参加は自由意思によること,個人情報は保護されること等を説明し同意を得た。
結  果
島の看取り文化を継承するケアの実践内容は,5つ導かれた。そのケアごとに見いだされた生活文化は以下のとおりであった。1.最後まで口から食べさせるケア:【生き抜いてきたことへの敬意】,【最期にある希望】などであった。2.生前に会いたい人とつなぐケア:【旅立つための思いを成就】,【命のつなぎ】などであった。3.思い出とともに安心して逝くケア:【つながりの確かめ】,【楽しく橋渡し】などであった。4.遺体を寂しがらせないケア:【島の死生観への責任】,【慣習と犠牲】などであった。5.別れの儀式のケア:【生活とともにある死】などであった。
考  察
高齢者の望む終末期ケアは,島の生活文化と死に対する見方を尊重されることであった。島の介護職は高齢者の最期の願いを叶えるために,介護サービス提供者として求められる役割と,島民として伝統的な社会を維持するために求められる役割の双方を発揮することによって,地域における看取りの実現に寄与していた。

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